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セマフォリン4Dは軟骨細胞の転写リプログラミングにより関節軟骨の破壊と関節の炎症を誘導する

Semaphorin 4D induces articular cartilage destruction and inflammation in joints by transcriptionally reprogramming chondrocytes

Research Article

SCIENCE SIGNALING
1 Nov 2022 Vol 15, Issue 758
DOI: 10.1126/scisignal.abl5304

Tomohiko Murakami1,*, Yoshifumi Takahata1, Kenji Hata1, Kosuke Ebina2, Katsutoshi Hirose3, Lerdluck Ruengsinpinya1,4, Yuri Nakaminami1, Yuki Etani5, Sachi Kobayashi1, Takashi Maruyama6, Hiroyasu Nakano7, Takehito Kaneko8, Satoru Toyosawa3, Hiroshi Asahara9,10, Riko Nishimura1,*

  1. 1 Department of Molecular and Cellular Biochemistry, Osaka University Graduate School of Dentistry, Osaka 565-0871, Japan.
  2. 2 Department of Musculoskeletal Regenerative Medicine, Osaka University Graduate School of Medicine, Osaka 565- 0871, Japan.
  3. 3 Department of Oral Pathology, Osaka University Graduate School of Dentistry, Osaka 565-0871, Japan.
  4. 4 Department of Oral Surgery and Oral Medicine, Faculty of Dentistry, Srinakharinwirot University, Bangkok 10110, Thailand.
  5. 5 Department of Orthopaedic Surgery, Osaka University Graduate School of Medicine, Osaka 565-0871, Japan.
  6. 6 Mucosal Immunology Unit, National Institute of Dental and Craniofacial Research, National Institutes of Health, Bethesda, MD 20895, USA.
  7. 7 Department of Biochemistry, Toho University School of Medicine, Tokyo 143-8540, Japan.
  8. 8 Department of Chemistry and Biological Sciences, Faculty of Science and Engineering, Iwate University, Iwate 020-8551, Japan.
  9. 9 Department of Systems BioMedicine, Tokyo Medical and Dental University, Tokyo 113-8510, Japan.
  10. 10 Department of Molecular Medicine, Scripps Research, La Jolla, CA 92037, USA.

* Corresponding author. Email: tmurakami@dent.osaka-u.ac.jp (T.M.); rikonisi@dent.osaka-u.ac.jp (R.N.)

軟骨破壊因子としてのSema4D

関節症における軟骨破壊には種々の古典的炎症促進性サイトカインが関与している。Murakamiらは、関節軟骨細胞および摘出した軟骨片においてセマフォリン4D(Sema4D)が炎症状態のマクロファージから放出され、軟骨基質分解を刺激することを見いだした。炎症性関節炎のマウスモデルでは滑液中のSema4Dが増加しており、Sema4Dの除去によって軟骨変性から保護することができた。またSema4Dは、その受容体であるPlexin-B2およびc-Metの下流に位置する基質分解酵素をコードする転写産物の発現を誘導することで、さらに、細胞の形態および運動性を調節するSema4Dの細胞内シグナル伝達経路とは異なる経路を刺激することで、これらの効果を誘発していた。これらの知見は、関節における炎症促進性サイトカインとしてのSema4Dの機能を明らかにするものであり、関節変性を促進する因子の幅広い理解に寄与する。

要約

炎症促進性サイトカインは関節症の病態形成に重要な役割を果たしている。質量分析に基づくクローニング法を用いることで、われわれは、軟骨破壊を直接促進する炎症性サイトカインとしてセマフォリン4D(Sema4D)を同定した。関節リウマチモデルのSema4d欠損マウスは野生型マウスと比べ、軟骨破壊が進んでいなかった。Sema4Dはマウス関節軟骨細胞において、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)やアグリカナーゼなどの軟骨分解性タンパク分解酵素の誘導を特徴とする、炎症促進性応答を誘導した。関節軟骨細胞におけるSema4DによるMmp13およびMmp3の発現の活性化は、RhoA(Sema4D誘導性の細胞骨格再編成を媒介するGTPアーゼ)に依存していなかった。その代わりに、この活性化は受容体Plexin-B2およびc-Metの下流に位置するNF-κBシグナル伝達およびRas-MEK-Erk1/2シグナル伝達を必要とし、転写因子であるIκBζおよびC/EBPδに依存していた。これらSema4Dシグナル伝達経路を遺伝学的および薬理学的に阻害すると、軟骨細胞におけるMMP誘導および大腿骨骨頭の器官培養における軟骨破壊が阻害された。これらの結果から、Sema4Dのシグナル伝達が軟骨破壊を促進する機構が明らかとなった。

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