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薬物使用中の腸内細菌
Gut bugs on drugs
SCIENCE SIGNALING
6 Dec 2022 Vol 15, Issue 763
DOI: 10.1126/scisignal.adg0571
Leslie K. Ferrarelli
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: lferrare@aaas.org
S. Cuesta, P. Burdisso, A. Segev, S. Kourrich, V. Sperandio, Gut colonization by Proteobacteria alters host metabolism and modulates cocaine neurobehavioral responses. Cell Host Microbe 30, 1615-1629.e5 (2022).
コカインの腸内マイクロバイオームに対する作用を標的とすることが、嗜癖を治療する1つの方法である可能性がある。
コカインを使用すると腸内細菌叢の組成が変化する可能性があり、腸内細菌叢が変化するとコカインの作用が変化する可能性がある。Cuestaらは、マウスにおいてこの関係の背後にある機構を発見した。コカインはカテコラミントランスポーターを阻害し、それによって神経伝達物質の取り込みと除去を障害する。マウスにコカインを投与すると、動物の腸内のノルエピネフリン量が増加した。ノルエピネフリンは特定の細菌によって感知され、その細菌の病原性を調節するが、コカイン投与マウスでは腸内ノルエピネフリン量の増加によって、常在性のシトロバクター・ローデンチウム(Citrobacter rodentium)(進化的にヒトの病原性大腸菌[Escherichia coli]に類似する)の異常発生が誘導された。この異常発生により、C. rodentiumおよびE. coliの窒素の代謝源となる神経伝達物質である、腸内のグリシンが枯渇した。マウスの循環血中および脳脊髄液中で、対応するグリシン存在量の低下が認められ、これは、自発運動亢進の増強および薬物探索行動の増加、さらには嗜癖に関連する脳領域である側坐核における、シナプス可塑性経路のトランスクリプトームレベルの変化と相関した。コカインに対するこれらの反応は、C. rodentiumまたはE. coliの、それぞれノルエピネフリンを感知できない、またはグリシンを取り込めない変異株を感染させたマウスでは認められなかった。行動作用は、グリシンまたは関連分子のサルコシンを食事で補給することによって防止された。これらの結果は、マウスにおけるコカインの行動作用に腸内マイクロバイオームが果たす直接的な役割を明らかにしており、ヒトにも当てはまる場合には、コカイン嗜癖を治療する1つの方法は腸を通じたものであるかもしれないことを示している。