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シナプス活性に依存した海馬パルミトイロームの変化

Synaptic activity-dependent changes in the hippocampal palmitoylome

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SCIENCE SIGNALING
6 Dec 2022 Vol 15, Issue 763
DOI: 10.1126/scisignal.add2519

Glory G. Nasseri1,†, Nusrat Matin1,†, Angela R. Wild1, Kira Tosefsky1, Stephane Flibotte2, R. Greg Stacey3, Rocio B. Hollman1, Leonard J. Foster3, Shernaz X. Bamji1,*

  1. 1 Department of Cellular and Physiological Sciences, Life Sciences Institute and Djavad Mowafaghian Centre for Brain Health, University of British Columbia, Vancouver, BC V6T 1Z3, Canada.
  2. 2 Life Sciences Institute Bioinformatics Facility, University of British Columbia, Vancouver, BC V6T 1Z3, Canada.
  3. 3 Department of Biochemistry and Molecular Biology, University of British Columbia, Vancouver, BC V6T 1Z3, Canada.

* Corresponding author. Email: shernaz.bamji@ubc.ca

† These authors contributed equally to this work.

パルミトイル化を介した学習

パルミトイル化を介した学習は、タンパク質の安定性、局在、機能を調節する脂質結合修飾で、シナプスの可塑性--学習と記憶を調節するシナプス強度の変化--と関連づけられている。Nasseriらは、プロテオミクス解析を用いて、恐怖条件づけされたマウスの海馬パルミトイル化の動態を明らかにした。シナプスに関連するタンパク質ではパルミトイル化が増加していたが、細胞代謝に関連するタンパク質ではパルミトイル化が減少していた。培養ラット海馬ニューロンで、シナプス脂質ホスファターゼ関連タンパク質PRG-1のパルミトイル化部位を変異させると、シナプス可塑性の変化が誘導する化学的刺激後のAMPA受容体輸送と棘突起形成が損なわれた。このデータは、認知におけるタンパク質パルミトイル化の役割を探究するためのリソースを提供するものである。- LF

要約

動的なタンパク質のS-パルミトイル化は、ニューロンの機能、発生、シナプス可塑性にとってきわめて重要である。シナプス活性に依存したパルミトイル化の変化は、少数のタンパク質で報告されている。本稿でわれわれは、文脈依存的な恐怖条件づけの前と後の雄マウスの海馬パルミトイロームの特徴を明らかにした。差次的なパルミトイル化が同定された121のタンパク質のうち、半数以上がシナプス関連タンパク質で、他のタンパク質は代謝機能、細胞骨格、シグナル伝達に関連した。シナプス関連タンパク質では、全般的に、恐怖条件づけ後にパルミトイル化が増加していた。対照的に、パルミトイル化が減少していたタンパク質のほとんどは、代謝過程に関連していた。同様の結果は、培養ラット海馬ニューロンでも、化学的に誘導される長期増強に応答して認められた。さらに、われわれは、シナプスタンパク質の1つで脂質リン酸ホスファターゼ関連タンパク質4型(LPPR4)としても知られる可塑性関連遺伝子1(PRG-1)のパルミトイル化が、シナプス活性に誘導されるα-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾールプロピオン酸受容体(AMPAR)のシナプス後膜への挿入にとって重要であることを明らかにした。これらの知見は、動的なパルミトイル化によって自身のシナプス可塑性、学習、記憶における役割を調節している可能性のあるタンパク質を同定するものである。

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