- ホーム
- lncRNA Gas5はcAMP依存性のシナプス可塑性を調節する活動応答性の足場である
lncRNA Gas5はcAMP依存性のシナプス可塑性を調節する活動応答性の足場である
The lncRNA Gas5 is an activity-responsive scaffold that mediates cAMP-dependent synaptic plasticity
SCIENCE SIGNALING
24 Jun 2025 Vol 18, Issue 892
DOI: 10.1126/scisignal.adn2044
Kaushik Chanda†, Eddie Grinman†, Kaylyn Clark, Abhishek Sadhu‡, Bindu Raveendra, Supriya Swarnkar, Sathyanarayanan V. Puthanveettil*
- Department of Neuroscience, Scripps Research, 130 Scripps Way, Jupiter, FL 33458, USA.
- * Corresponding author. Email: sputhanveettil@ufl.edu
- † These authors contributed equally to this work.
- ‡ Present address: Center for Alzheimer’s and Neurodegenerative Diseases, Peter O’Donnell Jr. Brain Institute, University of Texas Southwestern Medical Center, Dallas, TX, USA.
Editor's summary
ニューロンのシナプス可塑性には、シナプスと神経細胞体の間の長距離シグナル伝達によって部分的に調節されるシナプスプロテオームの変化が必要である。Chandaらは、長鎖非コードRNAであるGas5が、コードRNA、非コードRNA、タンパク質からなる巨大複合体のための活動応答性の足場として樹状突起で局所的にプロテオームの再構築を促進することを明らかにした。Gas5複合体は、海馬ニューロンにおいて興奮性伝達と樹状突起棘伸長を支援し、アルツハイマー病のマウスモデルでは脳内のGas5量が減少していた。これらの知見は、シナプス可塑性の空間的調節についてさらなる洞察を与えるものである。—Leslie K. Ferrarelli
要約
トランスクリプトームの変化は、学習と長期記憶の保持を下支えするニューロンの構造的な可塑性を形づくるうえできわめて重要である。本稿でわれわれは、対立する2つの可塑性関連経路——cAMPセカンドメッセンジャーシグナル伝達と代謝型グルタミン酸受容体(mGluR1およびmGluR5)シグナル伝達——が海馬ニューロンのトランスクリプトームに及ぼす影響と、これらの経路が構造的な変化を誘導するために協調的な別個の方法で機能する仕組みを調べた。トランスクリプトームデータと分子経路解析を統合することによって、海馬ニューロンにおいてcAMPおよび/またはmGluR1/5によって迅速に誘導される「ハブ」となる中心的な遺伝子を同定した。これらの遺伝子には長鎖非コードRNA(lncRNA)のGas5が含まれていた。Gas5は、とくにcAMPによって発現を誘導され、キネシンモータータンパク質KIF1Aによって樹状突起へと輸送された。樹状突起では、Gas5はシナプスの機能と可塑性に関連する多様なタンパク質、コードRNA、非コードRNAと相互作用し、これらの相互作用はcAMPシグナル伝達によって変化した。Gas5はマイクロRNAのmiR-26a-5pと相互作用し、miR-26a-5pのmRNA標的のうち、ニューロン機能に関連し、cAMPに翻訳を誘導される数種からmiR-26a-5pを隔離した。Gas5は、cAMPによって誘導される興奮性シナプス伝達にとってきわめて重要であったが、mGluR1/5によって誘導される興奮性シナプス伝達にとってはそれほど重要ではなかった。さらに、Gas5を欠損させると樹状突起の分枝とシナプスの形態が損なわれ、アルツハイマー病のモデルマウスの海馬ではGas5が減少していた。まとめると、これらの知見は、シナプスの可塑性に関与する転写ネットワークと、樹状突起で局所的に興奮性シナプス伝達とニューロン構造の制御を調節するlncRNAのインタラクトームについて洞察を与えるものである。