ドパミンがILC2を抑制する

Dopamine suppresses ILC2s

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
21 Feb 2023 Vol 16, Issue 773
DOI: 10.1126/scisignal.adh1665

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: jfoley@aaas.org

Y. Cao, Y. Li, X. Wang, S. Liu, Y. Zhang, G. Liu, S. Ye, Y. Zheng, J. Zhao, X. Zhu, Y. Chen, H. Xu, D. Feng, D. Chen, L. Chen, W. Liu, W. Zhou, Z. Zhang, P. Zhou, K. Deng, L. Ye, Y. Yu, Z. Yao, Q. Liu, H. Xu, J. Zhou, Dopamine inhibits group 2 innate lymphoid cell-driven allergic lung inflammation by dampening mitochondrial activity. Immunity, S1074-7613(22)00675-6 (2023).

ドパミンがマウスにおいてアレルゲン誘導性の2型自然リンパ球の応答を抑制し、気道炎症を緩和する

2型自然リンパ球(ILC2)は、組織の炎症を促進してアレルギー性喘息に関わるインターロイキン-5(IL-5)やIL-13含む2型サイトカインの主要な供給源である。ILC2は初期の2型免疫応答を引き起こし、その後のアレルゲンに対する2型ヘルパーT細胞(TH2)の応答を増強する。Caoらは、神経および粘膜組織において神経伝達物質および神経ペプチドがILC2応答を制御すること、さらに、重症度の高い喘息患者はパーキンソン病の発症リスクが高いことに注目し、神経伝達物質であるドパミンがILC2の機能を制御しているか否かを検討した。健常ドナーとは対照的に、喘息患者およびパーキンソン病患者では血漿中ドパミン量が少なく、それと関連して循環ILC2数が増加していた。In vitroでは、ドパミンは、マウスおよびヒトのILC2により分泌されるIL-5およびIL-13量を減少させ、ILC2の増殖を阻害した。アレルギー性炎症のマウスモデルにおいて、ドパミンは肺の2型サイトカイン量を減少させ、一方で肺のドパミン作動性ニューロンの除去によってILC2応答および気道炎症が増強された。ノックアウトマウスを用いた実験から、ILC2に対するドパミンの作用には、ドパミン受容体ファミリーのDRD1が介在していることが示された。マウスのILC2特異的なドパミンD1受容体のコンディショナルな欠損は、ILC2数の増加、2型サイトカイン産生の増強、および肺におけるアレルギー性炎症の悪化をもたらした。RNAシーケンシングおよび代謝アッセイから、ドパミンがILC2の酸化的リン酸化を阻害することが示された。パパイン誘導アレルギーのマウスモデルにおいて、ドパミンの経鼻投与はILC2応答を抑制し、気道炎症を緩和した。まとめるとこれらの知見は、ドパミン投与が喘息の治療戦略となる可能性を示唆している。

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