JMJD8はがんのSTINGを弱める

JMJD8 reduces cancer's STING

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
23 May 2023 Vol 16, Issue 786
[DOI: 10.1126/scisignal.adi7593]

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: avanhook@aaas.org

J. Yi, L. Wang, J. Du, M. Wang, H. Shen, Z. Liu, Y. Qin, J. Liu, G. Hu, R. Xiao, J. Ding, X. Chen, H. Wang, H. Huang, G. Ouyang, W. Liu, ER-localized JmjC domain-containing protein JMJD8 targets STING to promote immune evasion and tumor growth in breast cancer. Dev. Cell 58, 760-778.e6 (2023).

JMJD8はSTINGシグナル伝達を阻害し、抗腫瘍応答を低下させる。

ウイルスに感染した細胞またはDNA損傷剤に曝された細胞では、細胞質DNAセンサーのcGASが環状ヌクレオチドのcGAMPを産生し、cGAMPが小胞体(ER)上のインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)を活性化する。活性化されると、STINGはゴルジ体に運ばれ、TANK結合キナーゼ1(TBK1)とインターフェロン調節因子3(IRF3)を動員して、TBK1を介するIRF3活性化を引き起こし、抗ウイルス応答と炎症を促進するインターフェロン(IFN)やその他のサイトカインを産生させる。多くのウイルスがこの経路を標的として宿主防御を逃れ、がん細胞はこの経路を抑制または遮断するための機構を発達させる場合が多い。いくつかの脱メチル化酵素は、酵素的および非酵素的な機構を介してSTINGシグナル伝達を抑制する。JMJD8は、脱メチル化酵素の十文字Cドメイン含有ファミリーに属するが、触媒的に不活性であると予測されている。Yiらは、HEK293T細胞において、JMJD8がERに局在化し、STINGと直接相互作用することを見出した。JMJD8がノックダウンされると、TBK1、IRF3、およびIFN誘導性レポーターの活性化が増強された一方、JMJD8が過剰発現すると、これらの作用が用量依存的に低下した。ヒトおよびマウス乳がん細胞株において、JMJD8は、STINGとの結合をTBK1と競合することによってSTINGシグナル伝達を減弱させた。異種移植片と同種移植片を用いた実験では、JMJD8のノックダウンにより腫瘍増殖が抑制され、抗腫瘍免疫応答が促進され、抗PD-L1免疫療法またはDNA損傷性化学療法剤の増殖抑制効果が増強されることが示された。データマイニングにより、JMJD8は乳がん臨床検体の一部において増幅されており、IFN応答性遺伝子の発現低下および予後不良と相関することがわかった。これらの結果は、JMJD8が乳がんの免疫回避に寄与している可能性があることを示し、がん治療の多面的アプローチの一環としてSTINGシグナル伝達を増強することへの新たな関心の裏付けとなる。

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2023年5月23日号

Editor's Choice

JMJD8はがんのSTINGを弱める

Research Article

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