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絶食によって活気づくミトコンドリアの分裂

Mitochondrial fission fueled by fasting

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
8 Aug 2023 Vol 16, Issue 797
[DOI: 10.1126/scisignal.adk1008]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: wwong@aaas.org

N. Martinez-Lopez, P. Mattar, M. Toledo, H. Bains, M. Kalyani, M. L. Aoun, M. Sharma, L. B. J. McIntire, L. Gunther-Cummins, F. P. Macaluso, J. T. Aguilan, S. Sidoli, M. Bourdenx, R. Singh, mTORC2-NDRG1-CDC42 axis couples fasting to mitochondrial fission. Nat. Cell Biol. 25, 989-1003 (2023).

M. Valera-Alberni, W. B. Mair, Fast fragmenting mitochondria by TORC2. Nat. Cell Biol. 25, 926-927 (2023).

絶食はmTORC2を活性化し、ミトンドリアの分裂を促進してミトコンドリア呼吸を支援する

mTORC1およびmTORC2タンパク質複合体は、栄養が利用可能な状況では活性化されるが、絶食中は阻害され、それによって遊離脂肪酸が動員され、ミトコンドリアの酸化が起こり、ATPが生成されるものと考えられている。また、培養細胞では通常、短期的な飢餓によってミトコンドリアの融合が引き起こされる。ところが、Martinez-Lopezらはこれとは対照的に、in vivoでは絶食または遊離脂肪酸の利用可能性の向上によってmTORC2が活性化され、ミトコンドリアの分裂が促進されてミトコンドリア呼吸が支援されることを明らかにした(Valera-AlberniおよびMairも参照)。マウス肝臓のリン酸化プロテオミクス解析では、絶食または絶食後の食餌性トリグリセリドの摂食によってmTORC1およびmTORC2の両方と、mTORC2の下流キナーゼAKTおよびSGK1が活性化されることが示された。対照マウスの肝臓では、絶食によってミトコンドリア呼吸が亢進され、ミトコンドリアの分裂が促進され、ミトコンドリア数が増加し、トリグリセリドの蓄積が減少したが、このような作用は、肝臓のmTORC2を不活性化すると消失したがmTORC1を不活性化しても消失しなかった。絶食によって誘導されるミトコンドリアの分裂には、SGK1によるキナーゼNDRG1のリン酸化が必要であった。肝臓でNDRG1のリン酸化欠損変異体を発現する絶食マウスでは、肝臓のmTORC2を不活性化した絶食マウスの表現型模写が認められ、ミトコンドリアはより大きく、数は減少し、ミトコンドリア呼吸は抑制されていた。絶食によって誘導されるミトコンドリアの分裂には、NDRG1のリン酸化に加えて、ミトコンドリア分裂因子Drp1の受容体であるMFFと、RHO GTPアーゼであるCDC42が必要であった。これらの結果は、絶食時または遊離脂肪酸の利用可能性が高い状況でミトコンドリア呼吸を促進するために遊離脂肪酸の利用を支援するミトコンドリア動態を可能にするmTORC2のin vivoにおける役割を浮き彫りにしている。

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2023年8月8日号

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