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伸張を感知して食欲を抑える
Sensing stretch to suppress appetite
SCIENCE SIGNALING
9 Apr 2024 Vol 17, Issue 831
[DOI: 10.1126/scisignal.adp6031]
Wei Wong
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: wwong@aaas.org
Y. Zhao, Y. Liu, T. Tao, J. Zhang, W. Guo, H. Deng, M. Han, H. Mo, X. Tong, S. Lin, J. Yang, H. Zhai, Q. Wang, Z. Hu, W. Zhang, H. Chen, G. Xu, Gastric mechanosensitive channel Piezo1 regulates ghrelin production and food intake. Nat. Metab. 6, 458-472 (2024).
C. S. D. Lam, M. M. Kaelberer, The pressure not to eat. Nat. Metab. 6, 380-381 (2024).
食物の摂取が機械感受性イオンチャネルを活性化し、それがグレリン産生を阻害して食欲を抑制する。
グレリンは、胃のX/A様細胞によって分泌されるペプチドホルモンであり、食欲を刺激する。グレリンの産生は、食物の摂取と胃粘膜のmTOR経路による栄養可用性の検知によって阻害される。Zhaoらは、胃の膨満が機械感受性カチオンチャネルPiezo1を活性化し、グレリン産生を阻害することを明らかにした(LamおよびKaelbererも参照)。胃底部粘膜でのPIEZO1 mRNAの発現は、体格指数(BMI)と負の相関を示した。PIEZO1のmRNAおよびタンパク質は、マウス胃粘膜、特にX/A様細胞に存在した。対照マウスに比べて、X/A様細胞特異的なPIEZO1コンディショナル欠損マウスでは、グレリン産生量が多く、明暗周期の両周期で食物摂取量が多く、通常の固形飼料を与えた場合も高脂肪食を与えた場合も体重増加量が多かった。これらの作用は、グレリン受容体アンタゴニストによって無効化された。PIEZO1を介したCa2+流入は、キナーゼCaMKIVを促進し、さらにCaMKIVはmTORを活性化しうる。PIEZO1コンディショナルノックアウトマウスの胃体部粘膜では、CaMKIV、mTOR、およびmTOR基質のリン酸化が減少していた。食餌性肥満マウスでは、PIEZO1活性化因子Yoda1を注射すると、胃および血漿中のグレリン濃度が減少し、CaMKIVおよびmTORのリン酸化が増加し、食物摂取量が減少し、食欲と体重が減少した。Yoda1のこのような作用は、機械感受性チャネルの阻害剤によって無効化され、PIEZO1コンディショナルノックアウトマウスではみられなかった。機械的伸張を誘導する胃へのビーズ注入は、高脂肪食を与えられたマウスにおいて、Yoda1投与による作用の一部を模倣した。このように、食物摂取によって引き起こされる胃の膨満は、胃のX/A様細胞においてPIEZO1を活性化し、グレリンの産生と食欲を抑制する。