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前立腺がんにおいて脂質合成を阻害するとDNA損傷が誘導され、PARP阻害がもたらす細胞死が増加する

Blocking lipid synthesis induces DNA damage in prostate cancer and increases cell death caused by PARP inhibition

Research Article

SCIENCE SIGNALING
9 Apr 2024 Vol 17, Issue 831
[DOI: 10.1126/scisignal.adh1922]

Caroline Fidalgo Ribeiro1, †, Silvia Rodrigues1, †, Debora Campanella Bastos2, Giuseppe Nicolò Fanelli3, Hubert Pakula1, Marco Foiani4, Giorgia Zadra5, Massimo Loda1, 6, *

  1. 1 Weill Cornell Medical College, New York, NY, USA.
  2. 2 University of Campinas, Piracicaba, Brazil.
  3. 3 University of Pisa, Pisa, Italy.
  4. 4 IFOM/University of Milan, Milan, Italy.
  5. 5 Institute of Molecular Genetics, National Research Council, Pavia, Italy.
  6. 6 Dana-Farber Cancer Institute, Harvard Medical School, Boston, MA, USA.

* Corresponding author. Email: mloda@med.cornell.edu

† These authors contributed equally to this work.

Editor's summary

PARPの薬理学的阻害は、DNA損傷修復を抑制する作用を示し、種々のがんの治療に用いられている。しかし、効果が認められるのは去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)患者のごく一部のみである。Ribeiroらは、脂肪酸合成酵素(FASN)の阻害により、セラミド生成の増加に依存する形で、前立腺がん細胞におけるDNA損傷が増加することを示した。PARP阻害とFASN阻害を併用すると、ヒトCRPCオルガノイドで細胞死が増加した。この研究では、FASN阻害によってDNA修復阻害剤が増強される可能性があり、そのことでCRPC患者におけるPARP阻害剤の有効性が高まるかもしれないことが示されている。—Amy E. Baek

要約

アンドロゲン除去療法(ADT)は前立腺がんに対する主な治療法である。しかし、ADTに対する耐性が必ず生じて、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)に至る。前立腺がんの進行は、脂肪酸合成酵素(FASN)の過剰発現による脂肪酸のde novo合成の増加を特徴とし、この酵素は前立腺がんの治療標的となっている。FASNを阻害すると、細胞内のセラミドとスフィンゴミエリンの量が増加し、DNA二本鎖切断の形成を介してDNA損傷が生じ、細胞死に至る。われわれは、FASNiと、DNA損傷修復を阻害することにより細胞死を誘導するポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤のオラパリブとの併用によって、いずれかの薬剤を単独で用いた場合と比較して、細胞増殖がより顕著に減少することを見出した。PARP阻害剤とFASNiを併用投与したヒトCRPCオルガノイドは、より小さく、細胞増殖が減少し、アポトーシスと壊死が増加していた。総合するとこれらのデータは、FASNを標的にすることにより、DNA損傷修復の阻害を介したPARP阻害剤の治療効果が高まることを示しており、CRPCに対する併用療法を検討すべきであることを示唆している。

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