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グリアは睡眠のための原動力

Glia are powerhouses for sleep

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SCIENCE SIGNALING
23 Apr 2024 Vol 17, Issue 833
[DOI: 10.1126/scisignal.adp9115]

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.

Corresponding author. Email: lferrare@aaas.org

P. R. Haynes, E. S. Pyfrom, Y. Li, C. Stein, V. A. Cuddapah, J. A. Jacobs, Z. Yue, A. Sehgal, A neuron-glia lipid metabolic cycle couples daily sleep to mitochondrial homeostasis. Nat. Neurosci. 27, 666-678 (2024).

L. D. Goodman, M. J. Moulton, H. J. Bellen, Glial lipid droplets resolve ROS during sleep. Nat. Neurosci. 27, 610-612 (2024).

グリアは覚醒−睡眠周期に合わせて神経毒性脂質を取り込んで解毒し、ひいては健康な睡眠を促進している。

覚醒時間中、ニューロンは大量のエネルギーを消費する。それによりニューロン内で生じる代謝副産物、特に脂肪酸の蓄積と酸化は、毒性をもつ可能性がある。ストレスや傷害を受けたニューロンは脂肪酸をグリア細胞に輸送し、輸送されたグリア細胞内の脂肪酸は一時的に脂肪滴に貯蔵され、ミトコンドリアで代謝される。Haynesらはハエを用いた実験を行い、この輸送が正常な脳の生理機能の一部であり、睡眠周期と同期していること、さらにこのいずれかのプロセスの阻害は他方に支障を来たすことを明らかにした(Goodmanらの論文も参照)。覚醒状態にあるハエでは、ニューロンと関連するグリアの部分集団において脂肪滴の蓄積およびミトコンドリア内の酸化レベルが増加しており、これらは一晩の睡眠妨害によりさらに増加した。これらの増加は、グリアとニューロンの脂肪酸輸送に関わるタンパク質であるGLazおよびNLazをそれぞれノックダウンすることで、グリアでは減少したが、ニューロンのミトコンドリア内の酸化は増大した。同様に、ニューロン−グリア間の脂質輸送およびグリア内の脂肪滴の異化には、それぞれニューロンとグリア内のミトコンドリア損傷応答タンパク質Drp1を必要とした。ハエ成虫のいずれかの細胞種でGLaz、NLaz、Drp1または他のミトコンドリア損傷制御遺伝子をノックダウンすると、不眠および睡眠の断片化が生じた。さらに睡眠不足により、ニューロンとグリアにおけるマイトファジー(損傷ミトコンドリアの除去)量が減少した。このように睡眠は、脂質の解毒およびミトコンドリア代謝の細胞間機構と関連していた。特にGLazおよびNLazは、哺乳類のアポリポタンパク質E(ApoE)の機能的オルソログであり、これらの変異はアルツハイマー病のリスク因子である。さらに奇妙なことに、Drp1の活性は逆に覚醒-睡眠周期調節性のリン酸化によって制御されている。慢性的な睡眠障害は認知症の1つのリスク因子であり、アルツハイマー病患者において認められる。アルツハイマー病患者の場合、睡眠不足が病原であるのか、それとも二次的なものであるかが、しばしば問題となる。本研究の知見からその両方である可能性が示唆され、さらに、睡眠が健康な脳機能を支持している細胞間の機構、さらにその逆に健康な脳機能が睡眠を支持している細胞間の機構が(今回はハエにおいて)明らかとなった。

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