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傷つけるのではなく助けるようにミクログリアにバイアスをかける

Biasing microglia to help, not hurt

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
26 Mar 2024 Vol 17, Issue 829
[DOI: 10.1126/scisignal.adp3241]

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: lferrare@aaas.org

Z. Lv, L. Chen, P. Chen, H. Peng, Y. Rong, W. Hong, Q. Zhou, N. Li, B. Li, R. C. Paolicelli, Y. Zhan, Clearance of β-amyloid and synapses by the optogenetic depolarization of microglia is complement selective. Neuron 112, 740-754 (2024).

補体シグナル伝達の遮断により、ニューロンのシナプスではなくアミロイド凝集体を破壊するようにミクログリアにバイアスがかかる。

ミクログリアは神経変性疾患における両刃の剣であり、したがって、それらの治療としての可能性を活用することは、現時点ではお手上げである。例えば、アルツハイマー病(AD)のげっ歯類モデルでは、活性化したミクログリアが、神経毒性をもつβアミロイド(Aβ)凝集体の脳からの除去を仲介する一方で、シナプスを貪食し、神経変性や機能障害の一因にもなる。Lvらは、ミクログリアのシナプス標的化を仲介するタンパク質を同定した。これは、有害な結果を伴うことなくミクログリア活性化の有益性を引き出す治療戦略につながる可能性がある。遺伝子改変ミクログリアを青色光で刺激すると(光遺伝学と呼ばれる方法)、培地中でミクログリアによるオリゴマーAβの食作用性取り込みと分解が増加した。Aβを注入したまたはADモデルのトランスジェニックマウスでは、海馬の光遺伝学的刺激によりAβ除去が認められるとともに、シナプスと樹状突起スパインの消失が認められた。脳組織の解析により、ファゴリソソームマーカーの増加およびシナプスマーカーの減少の中で、補体因子C1qの存在量の増加が、光遺伝学的刺激を与えた領域に選択的に認められた。C1qはシナプスタンパク質群と共局在し、C1q遮断抗体を注入すると、光遺伝学的に誘導されるシナプス消失が防止され、ミクログリアの活性化またはミクログリアによるAβ取り込みには変化がなかった。C1qの豊富な存在が、げっ歯類モデルと同様に患者でもADの初期に観察されれば、これらの知見が、疾患の早期にシナプスとニューロン結合を損傷することなく、有毒なAβ沈着を減少させるように、ミクログリアを効果的に利用する方法につながる可能性がある。

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