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グリアへの分化の切り替えにはチームワークが必要

The gliogenic switch takes teamwork

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
22 Aug 2023 Vol 16, Issue 799
[DOI: 10.1126/scisignal.adk3288]

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: lferrare@aaas.org

A. J. Voss, S. N. Lanjewar, M. M. Sampson, A. King, E. J. Hill, A. Sing, C. Sojka, T. N. Bhatia, J. M. Spangle, S. A. Sloan, Identification of ligand-receptor pairs that drive human astrocyte development. Nat. Neurosci. 26, 1339-1351 (2023).

発生中の胎児脳では5つのシグナルキューでグリア産生のスイッチが入る。

胎児における中枢神経系の発生期には、同じ前駆細胞プールから空間的・時間的制御下でニューロンとグリア細胞(アストロサイトを含む)が発生する。すなわち、始めは主にニューロンが、その後は主にグリア細胞が発生する。このグリアへの分化の切り替えについて、転写レベルおよびエピジェネティックレベルで多数のデータが収集されている。Vossらは、この切り替えの背後にある細胞外のキューについて検討し、一握りのリガンドが連動して働いている可能性を明らかにした。単一細胞のトランスクリプトームデータからリガンド-受容体ペアの計算モデリンを行ったところ、アストログリアの遺伝子発現に影響する可能性が最も高い5つの候補物質として、増殖因子であるTGF-β2およびBMP4、シナプス細胞接着タンパク質NLGN1、サイトカインTSLP、ならびにWntシグナル伝達アンタゴニストDKK1が明らかとなった。ヒト大脳皮質オルガノイドおよび初代培養したヒトニューロン前駆細胞に全5つのリガンドを添加すると、アストロサイト遺伝子の発現が増大し、ニューロン遺伝子の発現が減少して、アストログリアの形態が誘導された。この正確な機構は確認されなかったが、5つのリガンドからなるカクテルの作用は一部、mTORC1(タンパク質合成を調節している多タンパク質複合体)および広範なアストロサイトの遺伝子サインの転写レベルでの誘導が媒介していると考えられた。これらの知見は、発生期のグリア分化の調節に関してさらなる洞察をもたらすものである。

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