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卵巣がんとインターフェロン

Interferon with ovarian cancer

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
29 Aug 2023 Vol 16, Issue 800
[DOI: 10.1126/scisignal.adk4659]

Amy E. Baek

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: abaek@aaas.org

Z. R. C. Marks, N. K. Campbell, N. E. Mangan, C. J. Vandenberg, L. J. Gearing, A. Y. Matthews, J. A. Gould, M. D. Tate, G. Wray-McCann, L. Ying, S. Rosli, N. Brockwell, B. S. Parker, S. S. Lim, M. Bilandzic, E. L. Christie, A. N. Stephens, E. de Geus, M. J. Wakefield, G. Y. Ho, O. McNally, A. O. C. Study, I. A. McNeish, D. D. L. Bowtell, N. A. de Weerd, C. L. Scott, N. M. Bourke, P. J. Hertzog, Interferon-ε is a tumour suppressor and restricts ovarian cancer. Nature 10.1038/s41586-023-06421-w, (2023).

インターフェロンεは抗腫瘍活性を有し、マウスの卵巣がんで抗腫瘍免疫を活性化する。

卵巣がんのなかで最も頻度の高いサブタイプである高異型度漿液性卵巣がん(HGSOC)は、低い生存率と関連し、発見時の進行期がその原因の一つとなっている。そのため、HGSOCの発生を形作る因子を同定して調べることの優先度は依然として高い。そのような因子候補の一つが、I型インターフェロン(IFN)サイトカインファミリーに属し、女性の生殖器系の上皮に高度に豊富に存在する、インターフェロンε(IFN-ε)である。Marksらは、健康なヒトのファロピウス管(卵管)およびマウスの輸卵管(卵管)の上皮ではIFN-εが発現されるが、HGSOCではIFN-εが失われることを明らかにした。卵巣がんの前臨床同所性モデルでは、野生型マウスと比べて、Ifne/マウスで転移増殖と免疫細胞数が増加していたことから、IFN-εの腫瘍抑制性の役割が示唆された。組換え型マウスIFN-εを導入すると、同所性腫瘍の確立後に導入した場合や、腫瘍細胞を腹膜腔に直接導入した進行卵巣がんモデルの場合であっても、腹膜転移は減少した。IFN-εで処置したマウスでは、CD4+およびCD8+ T細胞とナチュラルキラー細胞の活性化が促進され、その後、活性化されたそれらの細胞によって腹膜の腫瘍細胞が溶解された。IFN-εは、ID8卵巣がん細胞のアポトーシスを促進し、増殖を制限した。IFNシグナル伝達に必要な受容体が欠失しているがIfnar1+/+腫瘍細胞を移植されたIfnar1−/−マウスでは、IFN-ε処置後に転移性負荷が減少したことから、IFN-εが腫瘍細胞に直接作用することが実証された。2つのPDXモデルでは、IFN応答性細胞株はIFN-ε処理に対して感受性を示したが、IFN抵抗性細胞株はIFN-εに応答しなかった。腹膜転移の進行モデルで、Ifnar1−/− ID8細胞を正常なIfnar1を有するマウスに移植した。IFN-εは、これらのマウスでも、正常なIfnar1を有する細胞を移植したマウスでも、同様に腫瘍を除去したことから、腫瘍除去に対する宿主免疫環境の重要性が示唆された。この研究は、卵巣がんの発生の基礎となり標的となりうる重要な構成要素を同定するものである。

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卵巣がんとインターフェロン

Research Article

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