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IL—33—ST2シグナル伝達がWnt経路とNotch経路を介して骨髄性白血病細胞のサブタイプの幹細胞性を促進する

IL—33—ST2 signaling promotes stemness in subtypes of myeloid leukemia cells through the Wnt and Notch pathways

Research Article

SCIENCE SIGNALING
29 Aug 2023 Vol 16, Issue 800
[DOI: 10.1126/scisignal.add7705]

Pascal Naef1, 2, 3, †, Ramin Radpour1, 2, †, Carla A. Jaeger-Ruckstuhl1, 2, Nils Bodmer1, 2, Gabriela M. Baerlocher4, Hartmut Doehner5, Konstanze Doehner5, Carsten Riether1, 2, Adrian F. Ochsenbein1, 2, *

  1. 1 Department of Medical Oncology, Inselspital, Bern University Hospital, University of Bern, Bern 3010, Switzerland.
  2. 2 Tumor Immunology, Department for BioMedical Research (DBMR), University of Bern, Bern 3008, Switzerland.
  3. 3 Graduate School of Cellular and Biomedical Sciences, University of Bern, Bern 3012, Switzerland.
  4. 4 Laboratory for Hematopoiesis and Molecular Genetics, Experimental Hematology, Department of BioMedical Research (DBMR), University of Bern, Bern 3008, Switzerland.
  5. 5 Department of Internal Medicine III, University Hospital of Ulm, Ulm 89081, Germany.

* Corresponding author. Email: adrian.ochsenbein@insel.ch

† These authors contributed equally to this work.

Editor's summary

白血病幹細胞(LSC)は各種治療に対して抵抗性を示し、多くの慢性および急性白血病において再発を促進する。しかし、これら細胞種において標的となりうる経路は、正常な造血幹細胞(HSC)をも支持している。Naefらは、LSCが選択的に依存している機構を特定した。AML1-ETOおよびBCR-ABLなど白血病を誘導する融合タンパク質は、Wntシグナル伝達およびST2(サイトカインIL-33に対する受容体)が関与する自己永続的ループを通じて、LSCの増殖を促進していた。正常なHSCではST2は検出されなかったことから、ST2は患者において、より持続的な治療転帰を得るための細胞標的アプローチになりえることを示唆している。 —Leslie K. Ferrarelli

要約

細胞の幹細胞性は、静止状態にあること、多能性および長期の自己複製能を有することを特徴とする。慢性および急性骨髄性白血病(CMLおよびAML)患者では、治療抵抗性の白血病幹細胞(LSC)が再発の主な原因である。しかし、LSCと正常な造血幹細胞(HSC)ではしばしば同じシグナル伝達経路が両者の幹細胞性を支持しているため、LSCを治療標的とすることは難しい。われわれは細胞株および患者検体を用い、インターロイキン-33(IL-33)シグナル伝達が白血病においてのみ、サブタイプ特異的に幹細胞性を促進することを見いだした。IL-33受容体であるST2は、AML1/ETOおよびDEK/NUP214の転座または9q染色体に欠失[del (9q)]を有するCD34+ BCR/ABL1 CMLおよびCD34+ AML細胞の表面に豊富に存在していた。その他の白血病サブタイプおよびHSCにはほとんど認められないST2の、これらの細胞表面での存在量は、幹細胞性、Wntシグナル伝達の活性化およびNotchシグナル伝達の抑制と関連していた。培養細胞およびマウスにおいてIL-33-ST2シグナル伝達は、Wnt、MAPKおよびNF-κBシグナル伝達を活性化することでAML1/ETO、DEK/NUP214およびBCR/ABL1陽性LSCの維持および増殖を促進していた。Wntシグナル伝達およびそれによるNotch経路の阻害は、ST2をコードする遺伝子の発現をアップレギュレートし、それによって細胞自律的ループを形成していた。さらにIL-33-ST2シグナル伝達は、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)ニロチニブに対するCML細胞の抵抗性を促進し、標準化学療法に対するAML細胞の抵抗性を促進していた。このようにIL-33-ST2シグナル伝達の阻害はLSCを標的にし、これら白血病サブタイプにおける化学療法またはTKIに対する抵抗性を克服できるかもしれない。

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