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ポリシスチンは流れに乗る

Polycystin goes with the flow

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
5 Sep 2023 Vol 16, Issue 801
[DOI: 10.1126/scisignal.adk5700]

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: avanhook@aaas.org

Y. Tanaka, A. Morozumi, N. Hirokawa, Nodal flow transfers polycystin to determine mouse left-right asymmetry. Dev. Cell 58, 1447-1461.e6 (2023).

U. Tran, O. Wessely, Traveling to the left: A story of PKD1L1-containing vesicles. Dev. Cell 58, 1445-1446 (2023).

ポリシスチンサブユニットの非対称的な動きはマウス胚における左右非対称性の最初の破れの基となっている可能性がある。

多くの脊椎動物の胚における左右対称性の破れは、正中線に位置する左右オーガナイザー内の繊毛の時計回りの拍動に依存する。マウスでは、オーガナイザーは腹側結節として知られており、非運動性繊毛を有する冠細胞に囲まれた運動性繊毛を有する中心窩細胞で構成されている。運動性繊毛によって生成される流体の流れは細胞外小胞を移動させ、最終的に左側特異的遺伝子発現をもたらす結節の左側のCa2+の上昇に必要である(TranとWesselyによる解説を参照)。マルチサブユニットCa2+チャネルのポリシスチンとトランスフォーミング成長因子β(TGF-β)スーパーファミリーのメンバーであるNodalも対称性の破れに必要である。Tanakaらは、ポリシスチンサブユニットPKD1L1を、ヒト細胞でマウスPkd1l1遺伝子座を含む人工染色体から発現させた場合に、PKD1L1が細胞外小胞に濃縮されることを実証した。著者らは、無傷胚のライブイメージングと固定組織の解析を組み合わせて、PKD1L1を含む細胞外小胞が体液の流れによって結節の左端に押し出され、そこでPKD1L1がNodalと共局在することを発見した。培養細胞での実験により、合わせて機能性ポリシスチンを形成するPKD1L1とPKD2に依存して、Nodalが細胞内Ca2+の増加を誘発することが実証された。これらの発見は、他の細胞状況におけるポリシスチンの化学感覚の役割と一致して、ポリシスチンがNodalの化学センサーとして機能する可能性を示唆しており、結節の左側の細胞へのポリシスチンの輸送により細胞がNodalに対して感受性が高くなることで対称性を破るCa2+シグナルが生じることを示唆している。

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