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Spartinからリポファジーへのアプローチ

A spartin approach to lipophagy

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
12 Sep 2023 Vol 16, Issue 802
[DOI: 10.1126/scisignal.adk7152]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: wwong@aaas.org

J. Chung, J. Park, Z. W. Lai, T. J. Lambert, R. C. Richards, J. Zhang, T. C. Walther, R. V. Farese Jr., The Troyer syndrome protein spartin mediates selective autophagy of lipid droplets. Nat. Cell Biol. 25, 1101-1110 (2023).

脂質滴のオートファジー分解にはspartinタンパク質が必要である。

脂肪滴と呼ばれる細胞小器官は、リポファジーとして知られる特殊なオートファジープロセスによりリソソーム内で分解されうる、中性脂質を貯蔵している。Chungらは、脂肪滴およびオートファゴソームに結合する受容体として、Troyer症候群関連タンパク質spartinを同定した。Spartinは、特にペリリピン-3(脂肪滴の構造タンパク質)量が減少している脂肪滴に局在化していた。この局在化は、長鎖不飽和脂肪酸であるオレイン酸で処理した細胞において増強された。C末端の老化ドメインに両親媒性ヘリックスを欠いているTroyer症候群関連フレームシフト変異を有する型のspartinは、脂肪滴に局在化していなかった。Spartinは、そのUBRドメインにあるLC3相互作用領域(LIR)モチーフを介して、オートファゴソームタンパク質であるLC3AおよびLC3Cと相互作用していた。著者らは、リソソームの酸性環境において励起スペクトルのシフトが生じるフルオロフォアで標識した、脂肪滴マーカーを含むリポファジーレポーターを発現する細胞を作製した。その結果、spartinを欠損する細胞では、脂質枯渇により誘発される励起スペクトルのシフトが生じず、老化ドメインの両親媒性ヘリックスまたはLIRを欠損した型のspartinの発現によってもシフトは回復しなかった。Spartinはマウスニューロンにおいて検出され、脂肪滴に結合するがLC3に結合しないspartinのC末端断片のマウス脳内における発現は、脂肪滴数の増加およびトリグリセリド分解の減少を生じさせた。したがってこれらの結果は、リポファジーにはspartinがきわめて重要であること、しかも、Troyer症候群患者では運動ニューロン変性が認められることから、脂肪滴の代謝回転の欠失によって神経変性が生じる可能性を示唆している。

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