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TSLPは好酸球性食道炎においてメモリーCD4+ T細胞の病原性応答を形作る

TSLP shapes the pathogenic responses of memory CD4+ T cells in eosinophilic esophagitis

Research Article

SCIENCE SIGNALING
12 Sep 2023 Vol 16, Issue 802
[DOI: 10.1126/scisignal.adg6360]

Yrina Rochman1, Michael Kotliar1, Netali Ben-Baruch Morgenstern1, Artem Barski1, 2, Ting Wen1, Marc E. Rothenberg1, *

  1. 1 Division of Allergy and Immunology,Cincinnati Children's Hospital Medical Center, University of Cincinnati, Cincinnati, OH 45229, USA.
  2. 2 Division of Human Genetics, Department of Pediatrics Cincinnati Children's Hospital Medical Center, University of Cincinnati, Cincinnati, OH 45229, USA.

* Corresponding author. Email: rothenberg@cchmc.org

Editor's summary

上皮由来サイトカインTSLPは、好酸球性食道炎(EoE)などのアレルギー性疾患の患者の組織で存在量が増加している。TSLPはマウスTヘルパー2(TH2)細胞の分化と維持を誘発し、マウスTH2細胞は2型サイトカインを分泌してアレルギー応答を維持する。Rochmanらは、EoE患者の血中および食道組織で数が増加していたTSLP応答性メモリーCD4+ T細胞のサブセットを発見した。これらの病原性TH2様細胞は、2型サイトカインを産生し、フィードフォワードなシグナル伝達を呈してTSLP受容体の存在量を増加させる。これらの知見は、EoEの治療のために、抗TSLP療法をさらに探究するべきであることを示唆している。—John F. Foley

要約

サイトカインである胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)は2型免疫応答を調節し、TSLP活性を妨げる治療法は喘息の治療のために臨床使用されている。本稿でわれわれは、TSLPがヒトCD4+ T細胞を直接刺激することによってアレルギー性炎症に関与するかどうか、また、この過程がTSLPの変異体と関連する疾患である好酸球性食道炎(EoE)において操作可能であるかどうかを調べた。TSLP刺激の下流で活性化される転写因子STAT5のリン酸化の測定によれば、EoE患者から採取した食道由来メモリーCD4+ T細胞では約10%、対照者から採取した食道由来メモリーCD4+ T細胞では3%未満で、TSLP受容体が発現され、TSLPに直接応答することが示された。これに応じて、EoE患者では循環血液中に存在するTSLP応答性メモリーCD4+ T細胞数が増加していた。TSLPは、CD4+ T細胞の増殖を促進し、2型サイトカインの産生を亢進し、TSLP自身の受容体の増加を誘導し、212の遺伝子の発現を調節した。TSLPに対するエピジェネティックな応答には、BATFおよびIRF4クロマチン結合部位の豊富さが関連し、これらの転写因子がTSLPによって誘導されることによって、フィードフォワードループが提供された。TSLPに応答性を示す循環血液中および食道性のCD4+ T細胞の数は、食道の好酸球数と相関したことから、EoEの病原性を駆動するうえでTSLPが担っている可能性のある機能的役割が示唆され、循環血液中のCD4+ T細胞においてTSLPに誘導されるSTAT5のリン酸化の程度に基づく血液ベースの診断検査の基礎が提供された。これらの知見は、EoEの治療におけるTSLP阻害剤の治療薬としての可能性を強調する。

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