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ストレスを受けたHippoキナーゼはオートファジーを始める

Stressed Hippo kinase turns to autophagy

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
26 Sep 2023 Vol 16, Issue 804
[DOI: 10.1126/scisignal.adk9489]

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: lferrare@aaas.org

G. Seo, C. Yu, H. Han, L. Xing, R. E. Kattan, J. An, A. Kizhedathu, B. Yang, A. Luo, A. L. Buckle, D. Tifrea, R. Edwards, L. Huang, H.-Q. Ju, W. Wang, The Hippo pathway noncanonically drives autophagy and cell survival in response to energy stress. Mol. Cell 83, 3155-3170.e8 (2023).

HippoキナーゼMAP4K2はYAP非依存的な方法でエネルギーストレスに耐える。

Hippo経路は、通常はYAPという転写補因子の局在性を調節することによって、発生、器官の大きさ、組織恒常性、その他の生理学的機能を制御するキナーゼカスケードである。グルコースを豊富に含む環境はYAPの核移行を促進し、YAPは核内でグルコース代謝関連遺伝子の発現を刺激する。一方、グルコースが不足すると、Hippo経路下流のキナーゼ群がYAPをリン酸化して他の補因子との相互作用を失わせ、YAPを細胞質に隔離する。Seoらは、栄養ストレスに応答するHippo経路のYAP非依存性機能を見出した。ヒト胚性腎細胞を用いたHippoのインタラクトーム解析と生化学的アッセイでは、グルコースが欠乏すると、Hippo経路キナーゼMAP4K2の調節複合体STRIPAKからの解離が誘導されることが明らかになった。この解離によってMAP4K2の自己活性化が可能になり、自己活性化されたMAP4K2は、オートファジーの進行を支持するタンパク質LC3に結合してリン酸化した。MAP4K2をノックアウトすると、YAPのリン酸化は変化しなかったが、オートファジーのターンオーバーの停滞を示すLC3のpuncta(蓄積点)の数が増加し、栄養ストレス時の細胞生存能が低下した。野生型MAP4K2の発現を回復させると細胞生存能は回復したが、キナーゼ欠損型MAP4K2の発現を回復させても細胞生存能は回復しなかった。MAP4K2は頭部および頸部のがん細胞株および患者由来の検体に豊富に含まれていた。MAP4K2をノックダウンさせると、オートファジーに媒介される細胞株の生存は損なわれ、MAP4K2阻害因子で処置すると、マウスの舌扁平上皮がんの同所性異種移植片の増殖がLC3のリン酸化調節に依存する形で抑制された。Hippo経路キナーゼとオートファジーが関連づけられるのはこれが最初ではないが、今回の知見は、基礎となる機構についてのわれわれの理解を深めるものであり、オートファジーを介した一部の腫瘍の進行を阻止する可能性のある方法を示唆するものである。

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