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腸管修復の神経支配
Neural control of gut repair
SCIENCE SIGNALING
10 Oct 2023 Vol 16, Issue 806
[DOI: 10.1126/scisignal.adl1238]
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: avanhook@aaas.org
P. Wang, N. Kljavin, T. T. T. Nguyen, E. E. Storm, B. Marsh, J. Jiang, W. Lin, H. Menon, R. Piskol, F. J. de Sauvage, Adrenergic nerves regulate intestinal regeneration through IL-22 signaling from type 3 innate lymphoid cells. Cell Stem Cell 30, 1166-1178.e8 (2023).
腸管の損傷は、再生促進経路を刺激するアドレナリン作動性ニューロンの伸長を誘導する。
末梢ニューロンは多くの組織の恒常性、修復および再生に重要である。腸管神経系と、腸管を神経支配している交感神経および副交感神経は、腸管の生理機能を調節し、腸管の炎症を抑え、腸上皮の維持と修復を促進している。一方、3型自然リンパ球(ILC3)によって産生されるインターロイキン-22(IL-22)も、腸上皮バリアの維持、恒常性および修復に重要である。Wangらは、放射線障害を受け上皮再生中であるマウスの腸管ではアドレナリン作動性神経支配が増強していること、さらに、アドレナリン作動性ニューロンの化学的アブレーションにより再生速度が低下することを見いだした。単一細胞RNAシーケンシングにより、損傷後には神経栄養因子および軸索ガイダンスキューをコードする転写産物の発現が増加することが明らかにされ、再生中の回腸における分化上皮細胞サブセットのタイムリーな出現、および上皮細胞における損傷後の最大のIL-22応答誘導のためには、アドレナリン作動性神経支配が必要であることが示された。一連のin vivoおよびex vivo試験から、アドレナリン作動性ニューロンがβ2-アドレナリン受容体に依存する形でILC3を刺激してIL-22を分泌させることが実証された。IL-22遮断抗体を動物に投与すると腸上皮の再生速度が低下し、アドレナリン作動性ニューロンの除神経動物ではIL-22投与により再生が改善した。これらの知見から、腸管のアドレナリン作動性ニューロンは損傷誘導性の可塑性を示し、ILC3の刺激によって修復に寄与することが実証された。