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抑制性シナプス形成におけるグリア
Glia in inhibitory synaptogenesis
SCIENCE SIGNALING
28 May 2024 Vol 17, Issue 838
[DOI: 10.1126/scisignal.adq5728]
Leslie K. Ferrarelli
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.
Corresponding author. Email: lferrare@aaas.org
D. Irala, S. Wang, K. Sakers, L. Nagendren, F. P. Ulloa Severino, D. S. Bindu, J. T. Savage, C. Eroglu, Astrocyte-secreted neurocan controls inhibitory synapse formation and function. Neuron 112, 1657-1675.e10 (2024).
アストロサイトから分泌されたニューロカンが脳内の抑制回路の形成を誘導する。
アストロサイトは、ニューロンの代謝を支援する役割のほかに、多様なタンパク質の分泌を介して脳内の興奮性シナプスの発生を直接的に促進する。本稿でIralaらは、抑制性介在ニューロンの発生と機能を同様に直接的に誘導するようなアストロサイト分泌タンパク質を同定する。著者らは、グリアを含まないラット皮質ニューロンをラットのアストロサイト培地上清中で培養して抑制性シナプス結合と興奮性シナプス結合の両方を形成できるような系を考案した。アストロサイト培地上清のバイオインフォマティクス誘導スクリーニング後に、培養液中で検証したところ、ニューロカン(NCAN)と呼ばれるコンドロイチン硫酸プロテオグリカンが抑制性シナプス形成を強力に誘導することが明らかになった。マウス脳内では、Ncan発現が主にアストロサイトで濃縮され、生後発達の最初の数週、その後きわめて重要なシナプス形成が続く期間でピークに達した。Ncanノックアウトマウスの皮質内で発生した抑制性シナプスは、野生型の同腹仔の皮質内で発生した抑制性シナプスの約半数であり、同様に広範囲で微小抑制性シナプス後電流の欠失を伴った。NCANは切断型タンパク質であり、細胞外基質内のC末端断片とN末端断片に特徴的なタンパク質インタラクトームを有する。NCANのC末端断片の投与は、培養ニューロンにおける抑制性シナプス形成の十分条件であり、in vivoにおいて特定のサブタイプの抑制性シナプス形成を促進した。アストロサイトでNCANのC末端ドメインを欠損させると、抑制性シナプスの発生はかなり減少したが、興奮性シナプスの発生には影響しなかった。in vivoのNcanノックアウトアストロサイトでC末端断片を発現させると、抑制性シナプスの発生が回復した。これらの知見は、長らくつかみどころのなかったアストロサイトに誘導される抑制性シナプス形成のメディエーターの正体を明らかにするものであり、NCANの遺伝学的な不規則性が一部の精神疾患に関連する理由について洞察を与える可能性がある。