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Hippoシグナル伝達とPI5P4Kシグナル伝達の交差によるYAPの転写活性化の調節
Hippo and PI5P4K signaling intersect to control the transcriptional activation of YAP
SCIENCE SIGNALING
28 May 2024 Vol 17, Issue 838
[DOI: 10.1126/scisignal.ado6266]
Lavinia Palamiuc1, Jared L. Johnson2, 3, Zeinab Haratipour4, 5, Ryan M. Loughran1, Woong Jae Choi4, Gurpreet K. Arora1, Vivian Tieu1, Kyanh Ly1, Alicia Llorente1, Sophia Crabtree1, Jenny C.Y. Wong2, 6, Archna Ravi1, Thorsten Wiederhold7, Rabi Murad1, Raymond D. Blind4, *, Brooke M. Emerling1, *
- 1 Sanford Burnham Prebys, La Jolla, CA 92037, USA.
- 2 Weill Cornell Medicine, Meyer Cancer Center, New York, NY 10021, USA.
- 3 Department of Medicine, Weill Cornell Medicine, New York, NY 10021, USA.
- 4 Department of Medicine, Division of Diabetes, Endocrinology and Metabolism, Vanderbilt University Medical Center, Nashville, TN 37232, USA.
- 5 Austin Peay State University, Clarksville, TN 37044, USA.
- 6 Department of Cell Biology, New York University Grossman School of Medicine, New York, NY 10016, USA.
- 7 Cell Signaling Technology Inc., Danvers, MA 01923, USA.
* Corresponding author. Email: ray.blind@vanderbilt.edu (R.D.B.); bemerling@sbpdiscovery.org (B.M.E.)
Editor's summary
Hippo経路キナーゼの活性化により転写コアクチベーターYAPが細胞質内に保持され、その結果、YAPによる増殖促進遺伝子発現の刺激が阻止される。Palamiucらは、ホスホイノシチドPI5Pが、Hippo経路によるYAP阻害を強化することを見いだした(HirschらによるFocusも参照)。反対に、Hippo経路キナーゼはPI5P4K(PI5Pを代謝して、YAPを阻害しないホスホイノシチドに変換するホスホイノシチドキナーゼ)をリン酸化してその活性を抑制した。さまざまなヒトがん種において、PI5P4Kをコードする遺伝子の発現の亢進は、がんの進行に伴うYAP遺伝子シグネチャーの発現亢進と相関していた。これらの結果から、Hippoシグナル伝達の補助という点でホスホイノシチドが果たしているシグナル伝達上の役割が明らかになった。—Wei Wong
要約
ホスホイノシチドは不可欠なシグナル伝達分子である。ホスホイノシチドキナーゼのPI5P4Kファミリーと、その基質および産物であるそれぞれPI5PおよびPI4,5P2は、細胞内の代謝およびストレスセンサーとして働くことが解明されつつある。われわれは、これらのキナーゼが中継しているシグナル、及びこのシグナルノードを調節している特定の上流の調節因子を検討するため、不偏的スクリーニングを実施した。その結果、コアのHippo経路キナーゼであるMST1/2がPI5P4Kをリン酸化し、in vitroおよび細胞系においてそのシグナル伝達を阻害することを明らかにした。さらにわれわれは、PI5P4K活性が数種のHippoおよびYAP関連フェノタイプを制御すること、具体的には重要なHippoタンパク質であるMOB1とLATSの相互作用を低減し、上皮間葉転換を支配しているYAPを介した遺伝的プログラムを刺激していることを明らかにした。機構的には、PI5PがMOB1と相互作用し、MOB1とLATSとの相互作用を増強することで、Hippo経路とPI5P4Kとのシグナル伝達のつながりを実現していた。これらの知見から、進化的に保存されているこれら2つの重要なシグナル伝達経路が、どのように統合されて、後生動物の発生とヒト疾患を制御しているかが明らかになった。