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微生物がミツバチの学習を助ける
Microbes help honeybees learn
SCIENCE SIGNALING
26 Nov 2024 Vol 17, Issue 864
[DOI: 10.1126/scisignal.adu7439]
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.
Z. Zhong, X. Mu, H. Lang, Y. Wang, Y. Jiang, Y. Liu, Q. Zeng, S. Xia, B. Zhang, Z. Wang, X. Wang, H. Zheng, Gut symbiont-derived anandamide promotes reward learning in honeybees by activating the endocannabinoid pathway. Cell Host Microbe 32, 1944-1958 (2024).
H. Sun, G.-H. Wang, Microbial alchemists unlock honeybee cognition. Cell Host Microbe 32, 1877-1879 (2024).
腸内微生物が、食事性脂質を代謝することによって、ミツバチの内在性カンナビノイドシグナル伝達と学習を促進する。
食事性脂質と、腸内微生物がそれらから産生する代謝物は、哺乳類において認知に寄与する(SunとWang参照)。ミツバチの主な食事性脂質源である花粉の脂質組成は、植物種間で異なり、ミツバチの摂食嗜好性に影響を及ぼす。Zhongらは、脂肪酸のリノール酸(LA)を豊富に含む人工食により、腸内微生物叢に依存する形で、ミツバチがショ糖報酬を特定の匂いと関連づけて学習する能力が高まることを見出した。In vitro実験と脳内および腸内代謝物の分析により、腸内共生細菌Gilliamella apicolaが脂肪酸不飽和化酵素FADS2を産生し、この酵素がLAから後に脂肪酸神経伝達物質のアラキドノイルエタノールアミド(AEA)に変換可能な産物への代謝を可能にすることが示された。微生物叢を持たないミツバチにAEAを与えると、学習と記憶が十分に増強され、微生物叢を持たない動物にG. apicolaを定着させると、LAを介する学習の増強が回復した。AEAはアナンダミドとしても知られる、脊椎動物の内在性カンナビノイドである。昆虫には脊椎動物カンナビノイド受容体のホモログはないが、一過性受容器電位(TRP)チャネルが、昆虫の内在性カンナビノイド受容体として作用すると提唱されている。ミツバチ特異的なTRPチャネルであるAmHsTRPAは、脳のアストロサイトと髄鞘形成グリアに発現しており、分子ドッキングによりAEAに結合すると予測され、AEAで刺激したヒト細胞においてCa2+流入を媒介した。脊椎動物において、内在性カンナビノイドシグナル伝達は学習と記憶に重要であり、グリアにおいて内在性カンナビノイドシグナル伝達は、神経伝達物質であるグルタミン酸およびγ-アミノ酪酸(GABA)の取り込みと産生に関連する。G. apicolaの定着により、LAを与えたミツバチの脳内でグルタミン酸の全体的な存在量が減少し、AmHsTRPAをノックダウンすると、GABAが減少し、LAを介する学習と記憶の増強が抑制された。これらの結果は、内在性カンナビノイドシグナル伝達がミツバチの学習と記憶を促進しており、ミツバチの腸内共生細菌が、哺乳類の腸内共生細菌と同様に、宿主の認知に影響を及ぼす可能性があることを示している。