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p53を腫瘍抑制因子としての標的に偏らせる
Skewing p53 to tumor-suppressor targets

SCIENCE SIGNALING
11 Nov 2025 Vol 18, Issue 912
DOI: 10.1126/scisignal.aed6498
Leslie K. Ferrarelli
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.
Corresponding author. Email: lferrare@aaas.org
A. Indeglia, A. Valdespino, G. Pantella, S. Offley, C. Hill, M. Foster, K. Casey, H.-Y. Tang, A. M. Faustino, A. Gardini, M. E. Murphy, Targeted citrullination enables p53 binding to non-canonical sites. Mol. Cell 85, 3588–3604.E11 (2025).
S. Bhattacharjee, K. Regunath, C. Prives, A fork in the road: PADI4 citrullinates p53 to control immune-related networks. Mol. Cell 85, 3547–3549 (2025).
シトルリン化はp53の標的遺伝子の選択性を切り替えることで、その腫瘍抑制因子としての機能を増強する
がんにおいて転写因子p53は高頻度に変異しており、その機能喪失または機能獲得変異は腫瘍の発生および進展を促進する可能性がある。標的遺伝子プロモーターへのp53の結合能は、リン酸化、アセチル化、ユビキチン化およびメチル化といった翻訳後修飾(PTM)により部分的に制御されている。Indegliaらは、別のPTMであるシトルリン化が、p53の標的選択性を切り替えることを見いだした(Bhattacharjeeらの論説参照)。培養下のがん細胞および放射線照射したマウス由来の脾臓組織において、ペプチジルアルギニンデイミナーゼPADI4はp53をArg306およびArg363部位でシトルリン化した。これらのシトルリン化イベントは、p53応答エレメントをもつ標的遺伝子プロモーターへのp53結合を減少させた。このp53応答エレメントは、この転写因子に対する標準的結合部位であり、腫瘍を抑制するシグナル伝達と支持するシグナル伝達の両方と関連している。それと同時に,これらのPTMは、ETSファミリーの転写因子との結合部位をもつ標的遺伝子プロモーターとp53との会合を増強し、免疫関連を含む腫瘍抑制機能の亢進と関連していた。PADI4は、細胞ストレス特異的な方法で活性化された。さらに、PADI4における機能喪失型変異は多くのがんで認められるものの、その活性は腫瘍促進の役割をもつことも知られている。このように、PADI4を介したp53のシトルリン化を、予後予測や治療効果に活用するためには、生理的状況におけるこのPMTの理解を深める必要がある。
2025年11月11日号






