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CSF1R-CAR T細胞はCSF1Rシグナル伝達を誘導し、標的細胞の増殖を促進しうる

CSF1R-CAR T cells induce CSF1R signaling and can promote target cell proliferation

Research Article

SCIENCE SIGNALING
11 Nov 2025 Vol 18, Issue 912
DOI: 10.1126/scisignal.adv4112

Aurora Callahan1, Xinyan Zhang2, Amber Wang1, Aisharja Mojumdar1, Longhui Zeng2, Xiaolei Su2, *, Arthur R. Salomon1, *

  1. 1 Department of Molecular Biology, Cell Biology, and Biochemistry, Brown University, Providence, RI 02903, USA.
  2. 2 Department of Cell Biology, Yale School of Medicine, Yale University, New Haven, CT 06520, USA.
  3. * Corresponding author. Email: xiaolei.su@yale.edu (X.S.); drsalomon@gmail.com (A.R.S.)

Editor's summary

CAR T細胞は抗体をベースとするCAR構成要素によって認識された腫瘍細胞を死滅させることから、がん免疫療法で有効である。Callahanらは、CAR T細胞が免疫抑制性の腫瘍関連マクロファージ(TAM)を死滅させる可能性に着目し、ホスホプロテオミクス解析と機能解析を用いて、リガンドベースのCAR発現T細胞がTAMのモデルである受容体CSF1R発現THP-1細胞に及ぼす影響について調べた。CAR T細胞がTHP-1細胞と結合すると、CAR T細胞対THP-1細胞の比率が低い場合には細胞増殖を誘導するCSF1R依存性シグナル伝達が刺激されたことから、CARの結合が標的細胞応答に及ぼす影響をCARのデザインに織り込む必要があることが示唆された。—John F. Foley

要約

キメラ抗原受容体(CAR)T細胞は、再発性または難治性血液がんの治療において前例のない成功を収めている。CAR T細胞とその標的との相互作用および応答の根底にある機構に関するこれまでの研究では、CARライゲーションに対する腫瘍の応答がほとんど無視されてきた。われわれは、コロニー刺激因子1(CSF1)から構築された、標的細胞上のCSF1受容体(CSF1R)を標的とする第2世代のリガンドベースのCARによるシグナル伝達を、B細胞抗原CD19に対する従来の一本鎖可変断片ベースのCARと比較した。SILAC共培養をホスホチロシン濃縮とLC-MS/MS解析と共に用いて、CSF1R発現THP-1細胞とCSF1R-CAR T細胞のライゲーションがTHP-1におけるCSF1R様シグナル伝達を刺激することを明らかにした。対照的に、CD19-CAR T細胞と標的Raji細胞のライゲーション後には標的細胞のシグナル伝達応答は観察されなかった。チロシンキナーゼLck、アクチン重合、CSF1Rの低分子阻害剤を用いて、THP-1細胞におけるCAR誘導性CSF1Rシグナル伝達がT細胞の活性化を介さずにCSF1Rのキナーゼ活性のみに依存することを明らかにした。これに合致するように、CSF1R-CAR T細胞はエフェクター対標的の比率が低い状態ではTHP-1細胞の増殖を促進したが、比率が高い状態ではTHP-1細胞の増殖を妨げた。これらのデータは、標的細胞におけるCAR誘導性シグナル伝達のエビデンスを提供するものであり、これはCARの意図せぬ結果であり、最適な臨床効果を得るためのCAR抗原選択に重要な意味をもつ可能性がある。

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