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SH2ドメイン含有シグナル伝達タンパク質SHP2およびSRCではイオン化可能なネットワークがpH依存性アロステリーを仲介する
Ionizable networks mediate pH-dependent allostery in the SH2 domain–containing signaling proteins SHP2 and SRC

SCIENCE SIGNALING
11 Nov 2025 Vol 18, Issue 912
DOI: 10.1126/scisignal.adt3018
Papa Kobina Van Dyck1, 2, Luke Piszkin1, Elijah A. Gorski1, 2, Eduarda Tartarella Nascimento1, 2, 3, Joshua A. Abebe1, 2, Logan M. Hoffmann1, 2, Jeffrey W. Peng1, Katharine A. White1, 2, *
- 1 Department of Chemistry and Biochemistry, University of Notre Dame, 251 Nieuwland Science Hall, Notre Dame, IN 46556, USA.
- 2 Harper Cancer Research Institute, University of Notre Dame, 1234 N. Notre Dame Avenue, South Bend, IN 46617, USA.
- 3 Saint Mary's College, Notre Dame, IN 46556, USA.
- * Corresponding author. Email: kwhite6@nd.edu
Editor's summary
多くの細胞過程は、細胞内pHの一過性の変動に依存している。Van Dyckらは、ホスファターゼSHP2のpH感受性を決定するアミノ酸を計算的に同定する戦略を開発した。この方法により、著者らは、キナーゼのSRCがpH感受性であることも予測した。いずれのタンパク質でも、それぞれのSH2ドメインと触媒ドメインとの界面に位置するイオン化可能なアミノ酸が、in vitroおよび細胞内でのpH感受性活性を決定した。著者らは、他のタンパク質において、SH2ドメイン界面にクラスター化したイオン化可能なアミノ酸の同様のセットを見出し、pH感受性はこのドメインを有するタンパク質に共通している可能性があることを示唆した。—Annalisa M. VanHook
要約
細胞内pH動態は多数の細胞生物学的過程を調節する。われわれは、pH感受性タンパク質と、それらのpH依存性活性を調節する分子機構を同定するための計算パイプラインを開発した。pH依存性細胞過程を制御するシグナル伝達経路を調節するホスファターゼであるSHP2に、このパイプラインを適用したところ、SHP2のホスファターゼ活性はin vitroおよび細胞内でpH感受性であり、His116およびGlu252の変異によりSHP2のpH感受性活性が消失することが明らかになった。また、キナーゼSRCの活性はpH依存性であり、イオン化可能なアミノ酸のネットワークにおける変異により、pH感受性活性が消失することも見出された。さらに、SRCのキナーゼ活性は、リン酸化依存的にSRC活性を刺激する成長因子であるEGFの存在下でも、またはSRCの自己抑制を促進するリン酸化を模倣した置換(Y527E)があっても、pH感受性を示すことがわかった。これらのデータは、pH感受性調節が、確立されたリン酸化依存性機構と協調して機能し、SRCのキナーゼ活性を調節することを示唆している。SHP2とSRCの両方について、pH一定条件下での分子動力学(constant pH molecular dynamics, CpHMD)シミュレーションを行ったところ、各タンパク質の抑制性SH2ドメインとそれぞれの触媒ドメインとのpH依存性結合を介したアロステリック調節が裏付けられた。その他のSH2ドメイン含有シグナル伝達タンパク質においても、進化的に保存された、pHを感知するネットワークと推定される機構が同定された。総合すると、われわれのコンピュータを用いた生物物理学的な細胞解析は、細胞内pH動態が、モジュラーSH2シグナル伝達タンパク質の活性をアロステリックに調節し、細胞の生物学を制御する役割を果たすことを明らかにしている。
2025年11月11日号






