毛髪再生のための脂肪酸法

SCIENCE SIGNALING
25 Nov 2025 Vol 18, Issue 914
DOI: 10.1126/scisignal.aee0649

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.

Corresponding author. Email: wwong@aaas.org

K.-Y. Tai, C.-L. Chen, S. M.-Y. Fan, C.-H. Kuan, C.-K. Lin, H.-W. Huang, H.-W. Lee, S.-H. Wang, N.-W. Chang, J.-D. Lin, C.-F. Chang, K.-C. Yang, M. V. Plikus, S.-J. Lin, Adipocyte lipolysis activates epithelial stem cells for hair regeneration through fatty acid metabolic signaling. Cell Metab. 37, 2202-2219.e8 (2025).

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毛包の幹細胞は皮膚損傷後に脂肪細胞から放出される脂肪酸により活性化される。

皮膚損傷は、上皮毛包幹細胞（eHFSC）を活性化し発毛を誘導する。Taiらは、皮膚損傷が真皮白色脂肪組織（dWAT）の脂肪分解を誘導し、遊離脂肪酸（FA）を放出してeHFSCの増殖を刺激することを発見した。界面活性剤SDSの局所塗布によって引き起こされる皮膚炎のマウスモデルでは、dWATの脂肪細胞の脂肪滴サイズがeHFSCの増殖を再開するまで一時的に減少したことから、脂肪分解が一時的に減少したことが示唆された。脂肪トリグリセリドリパーゼ（ATGL）の薬理学的阻害またはAtglの遺伝子欠損は、dWATの脂肪分解を減少させ、SDS塗布後または熱損傷後の発毛を抑制した。損傷後のdWATの脂肪分解誘導には、皮膚の損傷部位へのマクロファージの浸潤と、それらによる脂肪分解誘導因子SAA3の産生が必要であった。培養マウスeHFSCにおいて、遊離FAの取り込みはFAトランスロカーゼCD36を介して行われ、一価不飽和FAは飽和FAや多価不飽和FAよりもミトコンドリアFAトランスロカーゼCPT1A依存的に脂肪酸酸化をより効率的に促進した。一価不飽和FAはミトコンドリアの生合成を促進し、これには転写共役因子PGC-1αが必要であった。著者らは、一価不飽和FAの局所塗布が脱毛症の治療に有効である可能性を示唆している。