- ホーム
- p16発現がサイクリンE1誘導性卵巣がんにおいてCDK2阻害薬に対する感受性を与える
p16発現がサイクリンE1誘導性卵巣がんにおいてCDK2阻害薬に対する感受性を与える
p16 expression confers sensitivity to CDK2 inhibitors in cyclin E1–driven ovarian cancers

SCIENCE SIGNALING
25 Nov 2025 Vol 18, Issue 914
DOI: 10.1126/scisignal.adv0415
Chance C. Sine1, 2, Lotte P. Watts1, Brianna Fernandez1, Nasreen Marikar1, Jianxin Wang3, Erik S. Knudsen3, Agnieszka K. Witkiewicz3, 4, Sabrina L. Spencer1, *
- 1 Department of Biochemistry and BioFrontiers Institute, University of Colorado Boulder, Boulder, CO 80303, USA.
- 2 Department of Molecular, Cellular, and Developmental Biology, University of Colorado Boulder, Boulder, CO 80303, USA.
- 3 Department of Molecular and Cellular Biology, Roswell Park Cancer Center, Buffalo, NY 14203, USA.
- 4 Department of Pathology, Roswell Park Cancer Center, Buffalo, NY 14203, USA.
- * Corresponding author. Email: sabrina.spencer@colorado.edu
Editor's summary
サイクリンE1を豊富に含む卵巣がんでは、キナーゼCDK2の阻害薬によって細胞周期が効果的に遮断される。しかし、CDK4およびCDK6の代償的活性によって細胞周期が再開されることにより、薬剤耐性が引き起こされる。Sineらは、タンパク質p16を多量に含むサイクリンE1誘導性細胞ではCDK2阻害薬がより永続的に有効であることを明らかにした。p16はCDK4/6が細胞周期を開始させるために必要な機能的相互作用を物理的に遮断するので、多量のp16はCDK4/6シグナル伝達を介したバイパスによるCDK2阻害薬耐性を抑止した。これらの知見は、CDK2阻害薬が、サイクリンE1とp16の両方を高発現する卵巣がんにおいて、より効果的となることを示唆している。—Leslie K. Ferrarelli
要約
細胞周期の遮断は、がん治療のための有望な手段となっており、重要な標的としてサイクリン依存性キナーゼ2(CDK2)が浮上している。ところが、複数の種類の細胞において、CDK4およびCDK6(CDK4/6)の活性がCDK2阻害を補償して腫瘍細胞の増殖を持続させ、CDK2の再活性化を可能にする。そこで、われわれは、CDK2阻害に対する感受性はこのCDK4/6を介した代償性機構の欠損と連関するものと仮定した。また、サイクリンE1誘導性卵巣がんが、CDK4/6シグナル伝達を阻害する腫瘍抑制因子p16を高頻度で共発現していることを明らかにした。単一細胞タイムラプスイメージングでは、高発現p16がCDK2阻害薬に対する感受性を高める一方で、p16が欠乏するとCDK4/6依存性補償によってCDK2阻害に対する細胞の耐性が高まることが示された。これに一致して、CDK2阻害薬に対して獲得された耐性は、p16タンパク質量の減少およびサイクリンD1タンパク質量の増加と相関した。患者から採取された225の卵巣腫瘍の多重免疫蛍光法では、腫瘍の18%でサイクリンE1およびp16が高発現されていることが明らかになった。このように、p16はCDK2阻害薬の恩恵を受ける可能性が最も高い患者を同定するための有用なバイオマーカーとなる可能性がある。
2025年11月25日号






