- ホーム
- 免疫学 細菌をSLAMFでたたく
免疫学
細菌をSLAMFでたたく
Immunology
SLAMming Bacteria
Sci. Signal., 5 October 2010
Vol. 3, Issue 142, p. ec304
[DOI: 10.1126/scisignal.3142ec304]
Wei Wong
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
SLAMF(シグナル伝達リンパ球活性化分子ファミリー)受容体はこれまで、様々な免疫細胞において接着・共刺激分子としての役割を確立している が、Bergerらはさらに、SLAMF受容体が細菌の認識、貪食及び殺菌にも働いていることを明らかにした。Slamf1-/-マウスはグラム陰性細菌 である大腸菌(Escherichia coli)を排除しなかったが、グラム陽性細菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcu aureus)を排除するという点は、野生型マウスと差がなかった。NADPHオキシダーゼ2(NOX2)酵素複合体は活性酸素種(ROS)を産生して細菌を死滅させるが、Slamf1-/-マウスのマクロファージは大腸菌に応答してより少量のROSしか産生せず、より速やかに酸性化される細菌含有ファゴソームを産生した。ただし、黄色ブドウ球菌に対してはこのような応答は示さなかった。野生型のマクロファージに比べて、Slamf1-/-マウスのマクロファージでは、大腸菌含有ファゴソーム(黄色ブドウ球菌は含有しない)が成熟するまでに長い時間を要し、さらにSlamf1-/-マクロファージではプァゴソームへの細菌の輸送は遅れを示した。また、大腸菌含有ファゴソームではSLAMが検出されたが、黄色ブドウ球菌含有ファゴソームでは検出されなかった。SLAMのN末端細胞外ドメインは外膜ポリンのOmpCとOmpFを認識し、Slamf1-/-マクロファージに比べて、野生型マクロファージでは精製OmpCに応答して多量のROSが産生された。ホスファチジルイノシトール3リン酸[PtdIns(3)P]はNOX活性を刺激し、ファゴソームの成熟を促進する。したがって、Slamf1-/-マ クロファージの大腸菌含有ファゴソームではPtdIns(3)Pの産生は少なく、SLAMをRAW264.7マクロファージにトランスフェクションする と、ファゴソーム中のPtdIns(3)P含量が増大した。SLAMは、ベクリン-1とアダプタータンパク質のEAT-2を介して、 Vps34(PtdIns(3)Pを産生するキナーゼ)およびVps15(Vps34の調節サブユニット)と相互作用した。このように、SLAMFタンパ ク質は接着分子や共刺激分子として働くのに加えて、グラム陰性細菌の特定の膜たんぱく質に対するセンサーとしても働き、これらの細菌の排除を促す。
S. B. Berger, X. Romero, C. Ma, G. Wang, W. A. Faubion, G. Liao, E. Compeer, M. Keszei, L. Rameh, N. Wang, M. Boes, J. R. Regueiro, H.-C. Reinecker, C. Terhorst, SLAM is a microbial sensor that regulates bacterial phagosome functions in macrophages. Nat. Immunol. 11, 920?927 (2010). [PubMed]
W. Wong, SLAMming Bacteria. Sci. Signal. 3, ec304 (2010).