幹細胞
領域による違い

Stem Cells
Regional Variations

Editor's Choice

Sci. Signal., 26 October 2010
Vol. 3, Issue 145, p. ec327
[DOI: 10.1126/scisignal.3145ec327]

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

 

神経線維腫症I型は、NF1の不活化によって引き起こされる遺伝性の癌症候群である。脳幹(BS)および視神経の星状細胞腫を特徴とし、大脳皮質(CTX)に腫瘍が生じる患者はまれにしかいない。Leeらは、BSおよびCTXの神経幹細胞(NSC)が、NF1がコードする腫瘍抑制因子であるニューロフィブロミンの欠失に対して異なる反応を示すことを報告する。Nf1ノックアウト新生仔マウスのBSから培養されたNSCは、野生型(WT)BS NSCと比較して、増殖およびグリア新生が亢進していたが、CTXから培養されたNSCは、野生型CTX NSCと比較して、亢進は認めらなかった。増殖が受ける影響はin vivoでも異なった。Nf1変 異体の脳は、WTマウスと比較して、BSの幹細胞数およびグリア前駆細胞数が増加していたが、CTXでは増加していなかったのである。Aktのリン酸化 は、WTと比較して、BSから培養されたNSCだけで増加していた。しかし、NSCにおける構成的活性型Aktの発現は、in vivoで、BSおよびCTXのいずれにおいてもグリア細胞数を増加させたことから、Akt活性の差が、これらの2つの領域におけるNf1欠失の影響の相違の根底にあるかもしれないということが示唆された。ラパマイシンの哺乳類標的複合体2(mTORC2)の構成要素であるrictorは、in vivoお よび培養NSCのいずれにおいても、CTXよりもBSに多く存在し、RNA干渉によるrictorのノックダウンは、BS NSCにおいて増殖およびAkt活性化を阻害したが、CTX NSCには影響を及ぼさなかった(mTORC1の構成要素raptorのノックダウンではそのようなことはなかった)。ラパマイシンは、Nf1変異体から培養された、BS NSCの増殖を阻害したが、CTX NSCの増殖は阻害せず、BS NSCにおいてサイクリン依存性キナーゼ阻害因子p27のAkt依存性Thr198リ ン酸化を阻害したが、CTX NSCでは阻害しなかった。合わせると、これらの結果から、rictorの存在量の相違が、BS NSCにおけるAktおよびp27活性化の亢進につながり、それにより、BS NSCは、ニューロフィブロミン欠失時の無秩序な増殖に対する感受性がとくに高くなることが示唆される。

D. Y. Lee, T.-H. Yeh, R. J. Emnett, C. R. White, D. H. Gutmann, Neurofibromatosis-1 regulates neuroglial progenitor proliferation and glial differentiation in a brain region-specific manner. Genes Dev. 24, 2317-2329 (2010). [Abstract] [Full Text] 

A. M. VanHook, Regional Variations. Sci. Signal. 3, ec327 (2010).

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