感覚知覚
皮膚の光検出器

Sensory Perception
Dermal Light Detectors

Editor's Choice

Sci. Signal., 21 December 2010
Vol. 3, Issue 153, p. ec384
[DOI: 10.1126/scisignal.3153ec384]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

光感知は、眼を持つ動物に限られるのではなく、「目の見えない」動物さえも照明に対して反応する。光を感知するこの能力は、餌探索または捕食回避に重要である可能性があり、ハエの幼虫では、食物の穴掘りを伴う。ハエの幼虫は、Bolwig器官と呼ばれる原始的な光感知構造を持ち、この構造によって、光を避けて穴に潜ることができるようになる。しかし、Garrityが指摘するように、ハエの幼虫は、いったん前部が埋まると、「砂の中に頭を隠したダチョウ」のようになるのをどのようにして回避するのであろうか?Xiangらは、Bolwig器官を除去した幼虫が、高強度の光に反応する(紫外線、紫色、および青色には反応するが、赤色や緑色には反応しない)ことを示した。高強度の光は、体壁を完全に覆う樹状突起を有するクラスIV樹状突起分岐ニューロン(クラスIVニューロン)において、カルシウムシグナル伝達を活性化して、活動電位の頻度を増加させる。クラスIVニューロンは、単離して培養しても光に反応した。予想外なことに、既知の光受容体、あるいはロドプシン、クリプトクロム、またはホスホリパーゼCといった下流シグナル伝達分子をコードするいくつかの遺伝子に変異を有するハエにおいて解析したところ、クラスIVニューロンの光反応は正常であった。その代わり、この形式の光検出には、味覚受容体28b(Gr28b)およびtransient receptor potential A1(TrpA1)が関与していた。Gr28bは、線虫(Caenorhabditis elegans)の光受容体として同定されたGタンパク質共役受容体のもっとも近いハエホモログである。Gr28bとTrpA1をコードする遺伝子のいずれかに変異を有するハエ、またはどちらかをノックダウンしたハエは、クラスIVニューロンにおける光反応を示さず、このような操作は、Bolwig器官を持たない動物において光回避を妨げた。クラスIVニューロンを除去すると、Bolwig器官が損なわれていない幼虫においてでさえも、光回避行動が低下した。クラスIVニューロンまたはBolwig器官のいずれかを除去した幼虫において、異なる光強度と波長に対する光回避反応を解析したところ、Bolwig器官は低強度の光に反応し、クラスIVニューロンは高強度の光に反応することが示唆された。これらの結果は、ハエの感知過程を明らかにするだけではなく、まだ完全にはわかっていない別の光感受性シグナル伝達経路の証拠を提供するものである。

Y. Xiang, Q. Yuan, N. Vogt, L. L. Looger, L. Y. Jan, Y. N. Jan, Light-avoidance-mediating photoreceptors tile the Drosophila larval body wall. Nature 468, 921-926 (2010). [PubMed]

P. A. Garrity, Feel the light. Nature 468, 900-901 (2010). [PubMed]

N. R. Gough, Dermal Light Detectors. Sci. Signal. 3, ec384 (2010).

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