がん
治癒してがんになる

Cancer
Healed into Cancer

Editor's Choice

Sci. Signal., 15 March 2011
Vol. 4, Issue 164, p. ec74
[DOI: 10.1126/scisignal.4164ec74]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

基底細胞癌(BCC)は一般的なヒト皮膚癌で、ヘッジホッグ(Hh)シグナル伝達の調節異常が関係していることが多い。Hh経路は正常な毛包サイクルに関わっており、このサイクルの間に様々な毛包部位(バルジ領域など)の幹細胞が、毛髪の成長と毛包間表皮および毛包の細胞の形成を調節している。WongとReiter、およびKasperらは、Hgシグナル伝達を亢進するようバルジ領域の細胞を遺伝子操作したとき、これらの細胞は深部皮膚創傷(切除でも切開でも)に反応して皮膚腫瘍を形成することを認めた。WongとReiterは2種類の遺伝学的モデルを用いて、Hh経路の構成要素であるSmoothenedSmoM2)の発がん性対立遺伝子をバルジ細胞(K15:SmoM2)または毛包間表皮(K14:SmoM2)のいずれかで誘導発現させた。K15:SmoM2マウスの皮膚は損傷のないときは腫瘍を発現しなかったが、切除創傷を加えたときBCC様の特徴をもつ腫瘍形成が誘発された。対照的にK14:SmoM2マウスは創傷のないときでも腫瘍を形成し、これらの細胞は、創傷後に治癒した上皮で形成された腫瘍でも認められた。Hhシグナル伝達を示唆するマーカー遺伝子を解析したところ、毛包内では発がん性遺伝子Smoは抑制されていたが、創傷によって再上皮化に向けた移動を誘導したとき、バルジ細胞由来のSmoM2発現細胞ではHhシグナル伝達が活性化された。またKasperらは、遺伝子操作により作成した誘導系K5Cre*PR1/Ptch1fl/flK5tTA/TREGLI1を用いて同様の分析を行った。それぞれバルジ細胞を用い、前者はHh経路の負の調節因子Patched1(Ptch1)を不活性化したもので、後者はHhシグナル伝達のメディエータであるGli1の発現を刺激したものである。いずれのモデルでも創傷を加えずに皮膚腫瘍が形成されたが、創傷を加えたとき腫瘍が大きくなり、Ptch1モデルでは腫瘍形成の頻度も増加した。両群でlineage tracingを行い、腫瘍内の細胞は毛包のバルジ細胞に由来することを確かめた。その上、表層に創傷をつけたり、毛髪をむしるだけでは、腫瘍形成を誘発するのに十分ではなかった。

S. Y. Wong, J. F. Reiter, Wounding mobilizes hair follicle stem cells to form tumors. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 108, 4093-4098 (2011). [Abstract] [Full Text]

M. Kasper, V. Jaks, A. Are, A. Bergstrom. A. Schwager, N. Barker, R. Toftgard, Wounding enhances epidermal tumorigenesis by recruiting hair follicle keratinocytes. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 108, 4099-4104 (2011). [Abstract] [Full Text] 

N. R. Gough, Healed into Cancer. Sci. Signal. 4, ec74 (2011).

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2011年3月15日号

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