- ホーム
- 神経科学 麻薬の運び屋
神経科学
麻薬の運び屋
Neuroscience
Stoner Transport
Sci. Signal., 10 January 2012
Vol. 5, Issue 206, p. ec10
[DOI: 10.1126/scisignal.2002828]
Wei Wong
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
J. Fu, G. Bottegoni, O. Sasso, R. Bertorelli, W. Rocchia, M. Masetti, A. Guijarro, A. Lodola, A. Armirotti, G. Garau, T. Bandiera, A. Reggiani, M. Mor, A. Cavalli, D. Piomelli, A catalytically silent FAAH-1 variant drives anandamide transport in neurons. Nat. Neurosci. 15, 64-69 (2012). [PubMed]
G. Marsicano, F. Chaouloff, Moving bliss: A new anandamide transporter. Nat. Neurosci. 15, 5-6 (2012). [PubMed]
内在性カンナビノイドであるアナンダミドのカンナビノイドCB1受容体への結合は、鎮痛の引き金となり、炎症を軽減する可能性がある。アナンダミドのシグナル伝達の終結には、1つまたは複数のトランスポーターを介したシナプス間隙からのアナンダミド除去と、それに続く膜結合型アミダーゼFAAH-1(脂肪酸アミドヒドロラーゼ1)およびFAAH-2による細胞内でのアナンダミドの加水分解が関わると考えられる(Marsicano and Chaouloff参照)。アナンダミドの輸送または異化を薬物で阻害すると、CB1依存的過程が亢進する。Fuらは、Faah遺伝子のスプライスバリアントの特徴を調べることによって、アナンダミドの細胞への取込みを媒介するトランスポーターを特定した。著者らがFLAT(FAAH様アナンダミドトランスポーター)と名付けたこのスプライスバリアントは、FAAH-1のアミノ酸残基9〜76を欠失しており、構造モデルからFAAH-1よりも水溶性が高いと予測された。遺伝子導入HEK細胞において、FLATもFAAH-1と同様にアナンダミドに結合したが、アナンダミドに対するアミダーゼ活性を示さなかった。放射性アナンダミドの蓄積は、FLATをトランスフェクトしたHEK細胞ではベクターをトランスフェクトした細胞に比べて多く、細胞をアナンダミド輸送の阻害薬または非放射性アナンダミドとインキュベートすると抑制された。低分子のFLAT阻害物質スクリーニングによって、ARN272が同定された。ARN272はin vitroで放射性アナンダミドとFLATの結合を競合阻害し、FLATを発現するHEK細胞と培養皮質神経細胞におけるアナンダミドの蓄積を抑制した。ARN272投与マウスではアナンダミド血漿中濃度が高値となり、ARN272は2つの化学物質(ホルマリンとカラギーナン)の注射によって引き起こされる疼痛と炎症を軽減した。このように、アナンダミドの細胞への取込みは、アナンダミドを異化する酵素の触媒的に不活性な型によって媒介される。
W. Wong, Stoner Transport. Sci. Signal. 5, ec10 (2012).