• ホーム
  • 細胞生物学 単なるプロテアーゼにあらず

細胞生物学
単なるプロテアーゼにあらず

Cell Biology
More Than a Protease

Editor's Choice

Sci. Signal., 6 March 2012
Vol. 5, Issue 214, p. ec71
[DOI: 10.1126/scisignal.2003016]

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

R. Shimizu-Hirota, W. Xiong, B. T. Baxter, S. L. Kunkel, I. Maillard, X.-W. Chen, F. Sabeh, R. Liu, X.-Y. Li, S. J. Weiss, MT1-MMP regulates the PI3Kδ·Mi-2/NuRD-dependent control of macrophage immune function. Genes Dev. 26, 395–413 (2012). [Abstract] [Full Text]

マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は、細胞外マトリックス(ECM)の再構築とマクロファージやがん細胞などの細胞による組織浸潤に関連することが多い。Shimizu-Hirotaらは、コラーゲンを豊富に含む組織へのさまざまな細胞種の浸潤を可能にする膜アンカー型MMPであるMT1-MMPが、マクロファージにおける遺伝子発現の調節因子として必要であることを報告する。MT1-MMP–/–マウス由来のマクロファージは、in vitroではプロテアーゼ活性の低下を示したにもかかわらず、2次元培養と3次元培養の両方で正常な遊走活性、走化活性、浸潤活性を示し、in vivoで組織に正常に侵入した。このことは、MT1-MMPがマクロファージによるECM再構築に単に関与しているだけではないことを示唆する。in vitroまたはマウスにおいて、細菌性リポ多糖による処置のあと、MT1-MMP–/–マクロファージは、野生型マクロファージに比べて通常はクロマチン再編成複合体Mi-2/NuRDによって抑制される炎症性遺伝子の発現の亢進とIL-10(抗炎症性サイトカインをコードする)の発現量の減少を特徴とする炎症性表現型を示した。MT1-MMP–/–マクロファージでは、Mi-2/NuRD複合体の構成要素をコードする転写産物の発現量が抑制され、Mi-2は炎症性サイトカインIL-12bをコードする遺伝子のプロモーターの位置に検出された。また、ホスホイノシチド3キナーゼ(PI3K)–Aktシグナル伝達も炎症応答の重要な修飾因子であるが、触媒サブユニットPI3Kδをコードするp110δの発現量は、MT1-MMP–/–マクロファージでは減少していた。野生型マクロファージにおいてPI3Kシグナル伝達を薬理学的に阻害すると、MT1-MMP–/–とよく似た炎症性表現型が現れた。野生型マクロファージではMMP阻害薬はp110δの発現に影響はなく、触媒不活性型MT1-MMPを発現させるとMT1-MMP–/–マクロファージの炎症性表現型が回復したことから、MT1-MMPのプロテアーゼ活性は遺伝子調節には不要であった。完全長で多様な変異型MT1-MMPはMT1-MMP–/–マクロファージにおける転写応答を回復させ、各変異型MT1-MMPは野生型マクロファージとMT1-MMP–/–マクロファージの両方において核へと移行した。対照的に、分泌型MT1-MMPは転写応答を回復させず、核へも移行しなかった。MT1-MMPはp110δのプロモーターの位置で検出され、p110δのレポーターの発現を促進した。このことは、MT1-MMPが転写コアクチベーターとして機能したことを示唆する。このように、ECM再構築への関与に加えて、MT1-MMPはPI3Kシグナル伝達の構成要素の発現を促進することによって、Mi-2/NuRD複合体の制御下にある免疫応答遺伝子の発現を調節する。

A. M. VanHook, More Than a Protease. Sci. Signal. 5, ec71 (2012).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2012年3月6日号

Editor's Choice

細胞生物学
単なるプロテアーゼにあらず

Research Article

AktとERKは、細胞周期抑制因子p57Kip2を介して、増殖因子IGF-1およびEGFに対する乳腺上皮細胞の増殖応答を制御する

STINGはサイトゾルDNAシグナル伝達経路においてTBK1によるIRF3リン酸化を指定する

Perspectives

サイトゾルのDNA依存性IRF3活性化に対するSTING末端の働き

最新のEditor's Choice記事

2021年7月20日号

ニューロテンシンによる熱産生の抑制

2021年7月13日号

腫瘍浸潤を促進する

2021年7月6日号

2021年6月29日号

アポトーシスを分散させて上皮を保護する

2021年6月22日号

損傷を置き去りにする