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アポトーシス
スフィンゴ脂質は細胞死の閾値を低下させる

Apoptosis
Sphingolipids Lower the Death Threshold

Editor's Choice

Sci. Signal., 13 March 2012
Vol. 5, Issue 215, p. ec75
[DOI: 10.1126/scisignal.2003033]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

J. E. Chipuk, G. P. McStay, A. Bharti, T. Kuwana, C. J. Clarke, L. J. Siskind, L. M. Obeid, D. R. Green, Sphingolipid metabolism cooperates with BAK and BAX to promote the mitochondrial pathway of apoptosis. Cell 148, 988-1000 (2012). [PubMed]

E. Hollville, S. J. Martin, Greasing the path to BAX/BAK activation. Cell 148, 845-846 (2012). [PubMed]

ミトコンドリアは、ミトコンドリア外膜透過性(MOMP)を亢進させるような刺激に応答してシトクロムcを放出することによって、アポトーシス経路において中心的役割を果たす。シトクロムcはカスパーゼ活性化複合体の核となる。アポトーシス誘発性BCL-2ファミリーメンバーのBAKとBAXは、細胞死促進シグナルに応答してオリゴマー化し、MOMPに寄与する細孔を形成する(HollvilleおよびMartin参照)。別のBCL-2ファミリーメンバーBIDは、BAKまたはBAXと相互作用し、それらのオリゴマー化、MOMPおよびシトクロムc放出を促進する。ミトコンドリアは、スフィンゴ脂質合成の初期ステップが起こる小胞体などの他の細胞小器官と相互作用する。セラミドはアポトーシス誘発性スフィンゴ脂質であり、スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)などの他の生物活性スフィンゴ脂質の前駆体でもある。Chipukらは、ミトコンドリア以外の膜成分も含有する「汚れた」ミトコンドリア調製液(小胞体陽性)は、膜のコンタミがない「クリーンな」ミトコンドリア調製液に比べて、アポトーシス誘発性切断型の組換えBIDまたはBID断片に応答して起こるシトクロムc放出の閾値が低いことを見いだした。クリーンな調製液から除去した画分は、クリーンな調製液に添加すると、BID感受性を回復するが、その画分にはスフィンゴミエリナーゼ(SMase)が豊富であった。in vitroで転写および翻訳されたSMaseは、BIDと共同してクリーンなミトコンドリア調製液からのMOMPを促進した。薬理学的阻害剤によってSMase活性の重要性が確認され、BAK阻害因子BCL-xLによってBAKの重要性が確認された。BAKの解析に使用した細胞にはBAXが含まれていなかったので、BAX添加により再構成したbakbax二重陰性細胞から調製したクリーンなミトコンドリア調製液を用いて同種の実験を実施した結果、SMaseはBIDによるアポトーシスに対して同様の共同的効果を示した。スフィンゴミエリン代謝経路の一連の薬理学的阻害剤によって、S1PがBAK媒介MOMPを促進すること、およびヘキサデセナール(hex、S1Pに由来する分子)がBAX媒介MOMPを促進することが判明した。S1Pおよびhexはそれぞれ、構造特異的抗体によって検出される、オリゴマー化に伴うBAKおよびBAX内の構造的再編成を促進した。脂質結合アッセイによって、BAKとS1Pの間、およびBAXとhex間の直接的な相互作用が確認された。SMaseの過剰発現は細胞死促進状態に対する感受性を亢進させ、スフィンゴシンキナーゼ活性のノックダウンはアポトーシス耐性を与えたことから、細胞死閾値設定におけるスフィンゴ脂質代謝の重要性が確認された。以上より、著者らは、小胞体あるいは他の膜区画からもたらされる脂質は、アポトーシス誘発の閾値を制御するミトコンドリアのスフィンゴ脂質代謝の前駆体を供給すると提唱している。

N. R. Gough, Sphingolipids Lower the Death Threshold. Sci. Signal. 5, ec75 (2012).

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