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細胞生物学
IKKはPI3Kを標的にする
Cell Biology
IKK Targets PI3K
Sci. Signal., 3 April 2012
Vol. 5, Issue 218, p. ec100
[DOI: 10.1126/scisignal.2003101]
John F. Foley
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
W. C. Comb, J. E. Hutti, P. Cogswell, L. C. Cantley, A. S. Baldwin, p85α SH2 domain phosphorylation by IKK promotes feedback inhibition of PI3K and Akt in response to cellular starvation. Mol. Cell 45, 719-730 (2012). [PubMed]
R. F. Lamb, Negative feedback loops: Nutrient starvation employs a new tr(IKK) to inhibit PI3K. Mol. Cell 45, 705-706 (2012). [PubMed]
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)は、p110触媒サブユニットとp85調節サブユニットで構成されており、細胞膜でホスファチジルイノシトール3,4,5-トリスリン酸(PIP3)を生成し、このPIP3が標的タンパク質の動員を誘発する。PI3Kの活性化を受ける部位である細胞膜への局在化は、そのSrc相同2(SH2)ドメインと、受容体およびアダプタータンパク質のリン酸化チロシン残基との相互作用に依存する。PI3Kの下流では、キナーゼのAktとmTORが、細胞増殖、ストレス応答、およびオートファジーを調節する。Combらは、飢餓に応答して起こるオートファジーの活性化に、NF-κBとは無関係にNF-κB阻害分子(IκB)キナーゼ(IKK)が必要であることに注目し(Lambの解説参照)、栄養を取り除いた細胞においてPI3K-Akt経路の調節について検討した。野生型およびIKK欠損マウス由来の胚性線維芽細胞(MEF)での実験において、IKKが飢餓によって誘発されるAkt活性のフィードバック阻害に必要であることが示された。ウエスタンブロット解析によって、野生型MEFでは、飢餓に応答してPI3Kのp85α調節サブユニットのSer690がリン酸化され、このリン酸化はIKK特異的阻害薬によって遮断されることが示された。Ser690(SH2ドメイン内に位置する)がIKKによってリン酸化されると、p85サブユニットとチロシンリン酸化タンパク質との相互作用が妨げられ、PI3Kの膜への局在も妨げられた。血清またはグルコースの欠乏ではなく、アミノ酸の欠乏によってMEFではIKKの活性化が起こり、特に、アミノ酸ロイシンが欠乏すると、MEFにおいてIKK依存性のPI3Kのリン酸化と阻害が誘発された。これらのデータを総合すると、IKKは、栄養飢餓に応答してPI3Kの細胞膜への動員を妨げ、その活性化を抑制することによって、PI3K-Aktシグナル伝達を抑制することが示唆される。
J. F. Foley, IKK Targets PI3K. Sci. Signal. 5, ec100 (2012).