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発生生物学
ヘッジホッグの助っ人

Developmental Biology
Hedgehog Helper

Editor's Choice

Sci. Signal., 17 July 2012
Vol. 5, Issue 233, p. ec188
[DOI: 10.1126/scisignal.2003399]

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

T. Stückemann, T. Wegleiter, E. Stefan, O. Nägele, K. Tarbashevich, G. Böck, E. Raz, P. Aanstad, Zebrafish Cxcr4a determines the proliferative response to Hedgehog signalling. Development 139, 2711-2720 (2012). [Abstract] [Full Text]

発生過程において、ヘッジホッグ(Hedgehog:Hh)シグナル伝達は細胞の運命と増殖の両方を制御するが、細胞がシグナル伝達に応答して分裂すべきか分化すべきかを決定する仕組みについては不明である。Sttückemannらは、ゼブラフィッシュ(zebrafish)原腸胚において、Hhシグナル伝達が内胚葉の細胞増殖を促進し、内胚葉以外(中胚葉と外胚葉)の細胞増殖を抑制したと報告している。ケモカインのストロマ細胞由来因子1(SDF-1)は他のタイプの細胞ではHhに誘導される増殖に関与すること、また、SDF-1活性化Gタンパク質共役受容体CXCR4aが内胚葉に存在することから、著者らは内胚葉の初期発生に関連するCXCR4aの役割について調べた。Hhシグナル伝達は、Hhが膜貫通受容体Patched(Ptc)に結合し、それによって膜貫通タンパク質Smoothened(Smo)をPtcによる抑制から解放すると誘導される。Smoは細胞内シグナル伝達を開始させる。したがって、PtcをノックダウンするとHhシグナル伝達は活性化される。内胚葉細胞では、モルフォリノを用いてCXCR4aをノックダウンすると、増殖が低下し、Ptcのノックダウンによって誘発される増殖亢進も遮断された。内胚葉以外の細胞では、PtcノックダウンによってHhシグナル伝達を活性化させると増殖が低下し、Ptcノックダウンと同時にcxcr4aを発現させると増殖が亢進し、Ptcをノックダウンせずにcxcr4aを発現させても亢進はみられなかった。これらのは、CXCR4aが内胚葉以外の細胞のHhシグナル伝達に対する応答を増殖の抑制から増殖の刺激へと切り替えるスイッチになっていることを示唆する。胚の表現型とHh標的遺伝子の発現、Hh経路変異の多様な組合せを用いた実験、モルフォリノを用いたノックダウン、およびcxcr4aの過剰発現によるアッセイでは、CXCR4aがgli1の発現を促進することが示された。gli1がコードするGli転写因子は、リプレッサードメインを欠失していて切断されないので、転写活性化因子としてのみ作用し、抑制因子としてはまったく作用しない。対照的に、プロテインキナーゼA(PKA)は、転写因子Gli2およびGli3をリン酸化することによってHhシグナル伝達を抑制し、タンパク質分解による抑制因子型へのプロセシングを促進する。PKAは環状アデノシン一リン酸(cAMP)と結合しているときには活性があり、cAMPを産生する酵素であるアデニル酸シクラーゼ(adenylyl cyclase:AC)はGα共役型GPCRによって抑制される。ドミナントネガティブ型PKAの発現とPKAバイオセンサーを用いた実験からは、Hhシグナル伝達に対する応答であるCXCR4aを介する増殖には、SmoとCXCR4aの両方の下流でPKAを不活性化する必要があることが示された。さらに、CXCR4aはAC上流でPKA活性を抑制した。CXCR4aのリガンドであるCXCL12bは中胚葉細胞で産生されることから、隣接する中胚葉がCXCR4を活性化することによって、Hhに応答する内胚葉細胞の増殖を促進している可能性が考えられる。

A. M. VanHook, Hedgehog Helper. Sci. Signal. 5, ec188 (2012).

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2012年7月17日号

Editor's Choice

発生生物学
ヘッジホッグの助っ人

Research Article

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Perspectives

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