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代謝
確実に褐色脂肪になる

Metabolism
SIRT-ain to Become Brown Fat

Editor's Choice

Sci. Signal., 7 August 2012
Vol. 5, Issue 236, p. ec205
[DOI: 10.1126/scisignal.2003471]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

L. Qiang, L. Wang, N. Kon, W. Zhao, S. Lee, Y. Zhang, M. Rosenbaum, Y. Zhao, Wei Gu, S. R. Farmer, D. Accili, Brown remodeling of white adipose tissue by SirT1-dependent deacetylation of Pparγ. Cell 150, 620-632 (2012). [Online Journal]

白色脂肪組織がエネルギーの貯蔵所として機能する一方で、褐色脂肪組織はエネルギーを熱として消散させる。白色脂肪組織は、「褐色化(browning)」と呼ばれる過程で、褐色脂肪に特異的な発熱遺伝子の発現など、褐色脂肪組織の特徴をいくつか獲得することがある。核内受容体PPARγ(peroxisome proliferator-activated receptor γ、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)を刺激すると、褐色脂肪組織に特異的な遺伝子の転写を促進する遺伝子の転写が引き起こされ、インスリン抵抗性に関連する内臓白色脂肪組織に特異的な遺伝子の転写が抑制される。デアセチラーゼSIRT1を過剰発現するマウス(SirBACOマウス)ではインスリン感受性が高まり、この反応はPPARγリガンドによっても誘導されることから、Qiangらは、SIRT1によるPPARγの脱アセチル化が白色脂肪の褐色化を促進する能力に影響するかどうかを調べた。内因性SIRT1はPPARγと相互作用し、外因的に発現されたPPARγとSIRT1の会合は、PPARγアゴニストのロシグリタゾンによって増加し、PPARγアンタゴニストのGW9662によって減少した。外因的に発現されたPPARγのアセチル化は、ロシグリタゾン、SIRT1の過剰発現、またはSIRT1活性化因子であるレスベラトロールによって減少し、SIRT1阻害因子であるニコチンアミドによって増加した。in vitroの脱アセチル化アッセイでは、野生型SIRT1はPPARγを脱アセチル化するが、触媒的に不活性な変異型(H363Y)SIRT1は脱アセチル化しないことが明らかにされた。白色脂肪細胞3T3-L1において、白色脂肪組織に特異的な遺伝子の発現は、レスベラトロールまたはPPARγアゴニストのトログリタゾンで処理すると増加し、GW9662またはニコチンアミドで処理すると減少した。白色脂肪の褐色化は、低温曝露(4℃)によって誘導でき、この過程はSIRT1阻害因子Dbc-1(Deleted in breast cancer)欠損マウスまたはSirBACOマウスで促進された。鼠径部白色脂肪組織のPPARγのアセチル化は、低温曝露されたマウスで減少した。対照的に、高脂肪食を摂食したマウスでは、PPARγのアセチル化が増加した。この高脂肪食による効果にはSIRT1との会合の減少が伴い、ロシグリタゾンで処理すると効果が逆転し、Dbc1-/-マウスやSirBACOマウスでは効果が減弱した。ロシグリタゾン処理後にはPPARγのLys268とLys293が脱アセチル化されており、脱アセチル化を擬態した変異型(K268R/K293R:2KR)PPARγを発現させると、線維芽細胞Swiss 3T3の脂肪細胞への分化が亢進された。転写抑制補助因子NCoRとの会合によってPPARγの活性が阻害される一方で、転写活性化補助因子Prdm16との会合は、白色脂肪の褐色化に必要である。ロシグリタゾンは、外因的に発現されたPrdm16とPPARγの会合を脱アセチル化に依存する形で誘導し、脱アセチル化を擬態した2KR変異型PPARγは、Prdm16と恒常的に会合した。変異解析では、PPARγとNCoRの相互作用を減弱させるためには両方のリジン残基の脱アセチル化が必要であり、PPARγとPrdm16の相互作用にはLys293の脱アセチル化が必要であることが示された。このように、SIRT1による脱アセチル化がPPARγの活性を促進し、白色脂肪組織の褐色化を誘導する。

W. Wong, SIRT-ain to Become Brown Fat. Sci. Signal. 5, ec205 (2012).

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2012年8月7日号

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