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細胞生物学
HippoはGPCRに応答する
Cell Biology
Hippo Responds to GPCRs
Sci. Signal., 21 August 2012
Vol. 5, Issue 238, p. ec218
[DOI: 10.1126/scisignal.2003518]
John F. Foley
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
F.-X. Yu, B. Zhao, N. Panupinthu, J. L. Jewell, I. Lian, L. H. Wang, J. Zhao, H. Yuan, K. Tumaneng, H. Li, X.-D. Fu, G. B. Mills, K.-L. Guan, Regulation of the Hippo-YAP pathway by G-protein-coupled receptor signaling. Cell 150, 780-791 (2012). [PubMed]
V. A. Codelia, K. D. Irvine, Hippo signaling goes long range. Cell 150, 669-670 (2012). [Online Journal]
Hippoシグナル伝達は器官サイズの決定にとって重要であり、この経路の調節異常は腫瘍形成と関連がある(CodeliaとIrvineによる解説参照)。Hippo経路はMST1とMST2(MST1/2)というキナーゼから成り、このMST1/2がLATS1およびLATS2(LATS1/2)キナーゼを活性化し、次にLATS1/2によって転写コアクチベーターのYAPおよびTAZがリン酸化されると、サイトゾル内に保持される。YAP/TAZは、脱リン酸化されると核内へと移行して、標的遺伝子の発現を誘導することによって、細胞増殖を引き起こす。Yuらは、Hippoシグナル伝達を調節するMST1/2の上流の細胞外シグナル分子について調べた。さまざまな培養細胞株において、YAPは、血清の添加後に脱リン酸化され、核内へと移行した。YAPの活性化を誘導した血清成分はリゾホスファチジン酸(LPA)であった。また、YAPはリゾリン脂質のスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)によっても刺激された。培養細胞のYAP/TAZをノックダウンすると、いくつかのLPA標的遺伝子の発現とLPAに誘導される細胞移動が抑制された。LPAは、MST1/2活性に対しては影響を及ぼさなかったが、LATS1/2のリン酸化と活性化を抑制した。LPAは、Gα12とGα13などのGタンパク質と共役するGタンパク質共役受容体(GPCR)を刺激し、受容体を阻害またはノックダウンすると、LPAによって誘導されるYAPの活性化が遮断された。さらに、Gα12またはGα13のノックダウン、あるいはその下流のエフェクターであるグアノシントリホスファターゼ(GTPase)のRhoファミリーの阻害によって、LPAおよびS1Pに誘導されるYAPの活性化が阻止された。RhoGTPaseはアクチン動力学を調節しており、アクチン重合を破壊すると、LPAおよびS1Pによって誘導されるYAPの活性化は阻害された。さまざまなGPCRのスクリーニングによって、Gα12/13、Gαq/11、またはGαi/oと共役するGPCRがYAPの脱リン酸化を引き起こすのに対して、Gαsと共役するエピネフリンやグルカゴンの受容体などのGPCRが、環状アデノシン一リン酸とPKAキナーゼに依存するYAPのリン酸化を主に誘導することが示された。まとめると、これらのデータは、GPCRを介して作用する細胞外因子が、活性化されたGタンパク質に依存するHippoシグナル伝達を区別して調節する可能性があること、およびHippoシグナル伝達はGPCRのいくつかの機能にとって必要であることを示唆する。
J. F. Foley, Hippo Responds to GPCRs. Sci. Signal. 5, ec218 (2012).