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制御機能またはエフェクター機能を亢進するためのT細胞シグナル伝達標的
T Cell Signaling Targets for Enhancing Regulatory or Effector Function
Sci. Signal., 31 July 2012
Vol. 5, Issue 235, p. pe32
[DOI: 10.1126/scisignal.2003364]
Fan Pan1, Huimin Fan2, Zhongmin Liu2*, and Shuiping Jiang2*
1 Department of Oncology, Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD 21231, USA.
2 Shanghai East Hospital of Tongji University, Shanghai 200120, China.
* Corresponding author. E-mail: shuiping.jiang@chinatregs2008.com (S.J.); zhongmin_liu@sina.com (Z.L.)
要約:感染に応答するために、休眠T細胞またはナイーブT細胞は、活性化、クローン増殖、およびエフェクターT細胞の特殊な機能サブセットへの分化を受けなければならない。しかし、過剰な免疫応答、あるいは自己破壊的な免疫応答を防ぐために、制御性T細胞(Treg)は、エフェクターT細胞などのエフェクター細胞の活性化と機能を抑制するために役立つ。転写因子Forkhead box P3(Foxp3)は、Tregの発達と機能に関与する遺伝子の発現を調節する。Foxp3は、他の転写因子、およびヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)やヒストンアセチルトランスフェラーゼなどのエピジェネティック因子と相互作用する。Tregの抑制性機能は、HDAC阻害因子への曝露によって増大する。しかし、異なるHDACファミリーメンバーのTregの機能に対する個々の寄与と作用機構についてはまだはっきりしない。ある研究から、HDAC6、HDAC9、およびSirtuin-1が、Foxp3の発現と機能に対して異なる影響を及ぼすことが示されたことから、HDACを個々に、または組み合わせて選択的に標的にすることによって、Tregの安定性と抑制機能が増強される可能性が示唆される。別の研究では、T細胞活性化のよく知られた阻害因子であるプログラム細胞死1受容体(PD-1)が、ユビキチンリガーゼSCFSkp2の基質認識構成成分(Skp2)をコードする遺伝子の転写を抑制することによって、エフェクターT細胞における細胞周期の進行を停止させることが示された。総合すると、これらの結果から、TregまたはエフェクターT細胞の機能を増強する新たなシグナル伝達標的が明らかになる。これは、移植や自己免疫疾患においてTregの抑制機能を高めるための将来の治療法、あるいはPD-1機能を遮断することによってエフェクターT細胞の抗ウイルス応答または抗腫瘍応答の規模を増大させるための将来の治療を考案するために役立つかもしれない。
F. Pan, H. Fan, Z. Liu, S. Jiang, T Cell Signaling Targets for Enhancing Regulatory or Effector Function. Sci. Signal. 5, pe32 (2012).