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Grb2:受容体チロシンキナーゼシグナル伝達の両刃の剣

Grb2, a Double-Edged Sword of Receptor Tyrosine Kinase Signaling

Perspectives

Sci. Signal., 6 November 2012
Vol. 5, Issue 249, p. pe49
[DOI: 10.1126/scisignal.2003576]

Artur A. Belov and Moosa Mohammadi*

Department of Biochemistry and Molecular Pharmacology, New York University School of Medicine, New York, NY 10016, USA.

* Corresponding author. E-mail: moosa.mohammadi@nyumc.org

要約:受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、リガンド刺激の無に状態で、基礎レベルのチロシンリン酸化とその活性を示す。これは、チロシンキナーゼ自己抑制の「漏れやすい(leaky)」特性と二重膜における受容体の確率論的衝突に起因すると考えられてきた。この基礎レベルのリン酸化は、生物学的応答として表れるのに十分な振幅と強度のシグナルを生み出すことは無い。したがって、このリン酸化は生物学的機能を持たない受動的で無益な過程であると考えられる。今回、RTKの基礎レベルのリン酸化が生理学的に意義のある過程であることを示す研究が、このパラダイムに対して問題提起している。この過程は、細胞内アダプタータンパク質の増殖因子受容体結合タンパク質2(Grb2)によって積極的に抑制され、リガンド刺激に対する迅速な応答のために受容体が「あらかじめ準備する(prime)」ように働く。Grb2はRTKシグナル伝達において正の役割を果たすことが従来から知られている。Grb2の負の調節における役割があることの発見は、このアダプターがRTKシグナル伝達の調節において両刃の剣として働くことを示している。

A. A. Belov, M. Mohammadi, Grb2, a Double-Edged Sword of Receptor Tyrosine Kinase Signaling. Sci. Signal. 5, pe49 (2012).

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