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がんに関連したアルギニンからヒスチジンへの変異は変異タンパク質にpH検知能の獲得をもたらす

Cancer-associated arginine-to-histidine mutations confer a gain in pH sensing to mutant proteins

Research Article

Sci. Signal. 05 Sep 2017:
Vol. 10, Issue 495, eaam9931
DOI: 10.1126/scisignal.aam9931

Katharine A. White1, Diego Garrido Ruiz2, Zachary A. Szpiech3, Nicolas B. Strauli3, Ryan D. Hernandez3,4,5, Matthew P. Jacobson2, and Diane L. Barber1,*

1 Department of Cell and Tissue Biology, University of California, San Francisco, San Francisco, CA 94143, USA.
2 Department of Pharmaceutical Chemistry, University of California, San Francisco, San Francisco, CA 94143, USA.
3 Department of Bioengineering and Therapeutic Sciences, University of California, San Francisco, San Francisco, CA 94143, USA.
4 Quantitative Biosciences Institute, University of California, San Francisco, San Francisco, CA 94143, USA.
5 Institute for Human Genetics, University of California, San Francisco, San Francisco, CA 94143, USA.

* Corresponding author. Email: diane.barber@ucsf.edu

要約
大半のがんの細胞内pH(pHi)は、正常細胞のpHiよりも恒常的に高く、これが増殖と細胞生存を増強する。体細胞性のアルギニンからヒスチジンへの変異はがんにおいて高頻度に認められ、野生型タンパク質にはみられないpH感受性をもたらすが、われわれは、pHiの上昇によってそのような変異に起因する腫瘍形成挙動が可能になることを見出した。pHiを実験的に上昇させると、R776H変異型の上皮成長因子受容体(EGFR-R776H)の活性が上昇し、それにより線維芽細胞の増殖が増強され、形質転換が引き起こされた。ArgからGlyへの変異では、これらの作用は付与されなかった。EGFRの分子動力学シミュレーションにより、高pHでHis776のプロトン化が減少すると、αCへリックスのコンホメーションが変化し、キナーゼの活性型が安定化される可能性があることが示唆された。転写因子p53のArgからHisへの変異(p53-R273H)により、転写活性が低下し、線維芽細胞と乳がん細胞において高pHiでDNA損傷応答が減弱したが、ArgからLysへの変異ではそのような作用は認められなかった。pHiを低下させると、EGFR-R776Hとp53-R273Hの両方の腫瘍形成作用が減弱した。これらのデータから、いくつかの体細胞変異が、がん細胞のより高いpHiに適応上の利点を与える可能性が示唆される。

Citation: K. A. White, D. G. Ruiz, Z. A. Szpiech, N. B. Strauli, R. D. Hernandez, M. P. Jacobson, D. L. Barber, Cancer-associated arginine-to-histidine mutations confer a gain in pH sensing to mutant proteins. Sci. Signal. 10, eaam9931 (2017).

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