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MARCH8はcGASを介する自然免疫応答をユビキチン化によって減弱する

MARCH8 attenuates cGAS-mediated innate immune responses through ubiquitylation

Research Article

SCIENCE SIGNALING
3 May 2022 Vol 15, Issue 732
DOI: 10.1126/scisignal.abk3067

Xikang Yang1,2,3,†, Chengrui Shi1,2,3,†, Hongpeng Li1,2,3,4, Siqi Shen1,2,3, Chaofei Su1,2,3, Hang Yin1,2,3,*

  1. 1 School of Pharmaceutical Sciences, Key Laboratory of Bioorganic Phosphorous Chemistry and Chemical Biology (Ministry of Education), Department of Chemistry, Tsinghua University, Beijing 100084, China.
  2. 2 Beijing Advanced Innovation Center for Structural Biology, Tsinghua University, Beijing 100084, China.
  3. 3 Tsinghua-Peking Joint Center for Life Sciences, Tsinghua University, Beijing 100084, China.
  4. 4 School of Medicine, Tsinghua University, Beijing 100084, China.

* Corresponding author. Email: yin_hang@tsinghua.edu.cn

† These authors contributed equally to this work.

cGASに向かって進撃する

細胞質DNAセンサーのcGASは、微生物DNAと宿主DNAの両方に応答し、環状ヌクレオチドcGAMPを生成する。cGAMPはアダプタータンパク質STINGを活性化し、I型インターフェロン(IFN)の産生を引き起こす。cGASは自然免疫応答に重要であるが、cGASが不適切に活性化すると、自己免疫応答を引き起こす。Yangらは、E3ユビキチンリガーゼのMARCH8が、cGASとDNAの結合を抑制することを見出した。この作用は、MARCH8によるcGASのLys411のユビキチン化によって仲介され、cGAMPおよびI型IFN産生の阻害につながった。対応する野生型マウスと比較して、MARCH8を欠損したマウスでは、DNAウイルスであるHSV-1に対するIFN応答が増強された。これらの結果から、MARCH8の活性またはMARCH8とcGASの相互作用を治療的に増強することが、一部の自己免疫疾患に対する治療戦略となる可能性が示唆される。

要約

環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)は、細胞質内の微生物および自己DNAに結合し、環状GMP-AMP(cGAMP)を合成する。cGAMPはインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)と下流のメディエーターを活性化し、自然免疫応答を誘発する。cGAS活性の調節は、免疫恒常性に不可欠である。今回、われわれは、E3ユビキチンリガーゼのMARCH8(別名MARCHF8、c-MIR、RNF178)を、cGASを介するシグナル伝達の負の調節因子として同定した。二本鎖DNAに対する免疫応答は、MARCH8の過剰発現によって減弱され、MARCH8のノックダウンまたはノックアウトによって増強された。MARCH8は、その保存されたRING-CHドメインを介してcGASの酵素活性コアと相互作用し、cGASのLys411のリジン63(K63)結合ポリユビキチン化を触媒した。このポリユビキチン化事象によって、cGASのDNA結合能が阻害され、cGAMP産生が低下し、下流の自然免疫応答が減弱した。さらに、March8欠損マウスは、対応する野生型マウスと比較して、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)に感染しにくかった。総合すると、われわれの結果は、cGASの機能的調節と自然免疫応答の微調整の基礎にある機構を明らかにしている。

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