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Clostridioides difficileの胆汁塩耐性、浸透圧耐性および長期宿主定着にはc-di-AMPのシグナル伝達が必要

c-di-AMP signaling is required for bile salt resistance, osmotolerance, and long-term host colonization by Clostridioides difficile

Research Article

SCIENCE SIGNALING
6 Sep 2022 Vol 15, Issue 750
DOI: 10.1126/scisignal.abn8171

Marine Oberkampf1,†, Audrey Hamiot1,†,‡, Pamela Altamirano-Silva2, Paula Bellés-Sancho1,§, Yannick D. N. Tremblay1,||, Nicholas DiBenedetto3, Roland Seifert4, Olga Soutourina5, Lynn Bry3,6, Bruno Dupuy1,*, Johann Peltier1,5,*

  1. 1 Institut Pasteur, Université Paris Cité, UMR-CNRS 6047, Laboratoire Pathogenèse des Bactéries Anaérobies, F-75015 Paris, France.
  2. 2 Centro de Investigación en Enfermedades Tropicales, Facultad de Microbiología, Universidad de Costa Rica, San José, Costa Rica.
  3. 3 Massachusetts Host-Microbiome Center, Department of Pathology, Brigham and Women's Hospital, Harvard Medical School, Boston, MA, USA.
  4. 4 Institute of Pharmacology and Research Core Unit Metabolomics, Hannover Medical School, Hannover, Germany.
  5. 5 Université Paris-Saclay, CEA, CNRS, Institute for Integrative Biology of the Cell (I2BC), 91198 Gif-sur-Yvette, France.
  6. 6 Clinical Microbiology Laboratory, Department of Pathology, Brigham and Women's Hospital, Boston, MA, USA.

* Corresponding author. Email: bruno.dupuy@pasteur.fr (B.D.); johann.peltier@i2bc.paris-saclay.fr (J.P.)

† These authors contributed equally to this work.

‡ Present address: UMR 8207 UMET, INRAE, CNRS, Université de Lille 1, 59650 Villeneuve d'Ascq, France.

§ Present address: Department of Plant and Microbial Biology, University of Zürich, CH-8057 Zürich, Switzerland.

|| Present address: Department of Biochemistry, Microbiology and Immunology, University of Saskatchewan, Saskatoon, SK, Canada.

C. difficileのための腸内c-di-AMP状況分析

Clostridioides difficileは抗生物質起因性腸炎を引き起こす。この菌が腸内に定着するためには、腸内腔の高い浸透圧に適応し、胆汁塩の抗菌作用に耐性をもつ必要がある。Oberkampfらは、C. difficileが多様な環境条件に応答して細胞内セカンドメッセンジャーc-di-AMPを産生したり、分解したりすることを報告した。c-di-AMPの産生は、K+と細胞壁の恒常性ならびにバイオフィルム形成を促進したが、浸透圧ストレスに対しては細胞の感作をもたらした。胆汁塩はc-di-AMPの分解を誘導したが、この分解の誘導は、高浸透圧ストレスおよび胆汁塩からC. difficileを保護する溶質取り込み系をコードする遺伝子の、抑制解除に必要であった。c-di-AMP分解酵素を欠損している変異細菌は、抗生物質を投与されたマウスの腸に定着しなかった。これらの知見から、C. difficileにおいてc-di-AMPが重要なシグナル伝達分子であり、宿主定着において役割をもつことが確認された(PurcellによるFocus参照)。

要約

ヒト腸管病原菌であるClostridioides difficileが宿主に定着して疾患を引き起こすためには、消化管という苛酷な環境を感知し、反応し、適応しなければならない。われわれは、C. difficileの成長、環境適応および感染という異なるフェーズにおいて、サイクリック-ジアデノシン一リン酸(c-di-AMP)の産生と分解が不可欠であることを明らかにした。このヌクレオチドセカンドメッセンジャーは、カリウムの取り込みを調節し、バイオフィルム形成および細胞壁の恒常性にも寄与しているため、この産生は菌の成長に不可欠であった。一方でその分解も、浸透圧耐性ならびに界面活性剤と胆汁塩に対する耐性に必要であった。c-di-AMP結合転写因子であるBusRは、適合溶質トランスポーターBusAA-ABをコードする遺伝子の発現を抑制した。BusRを欠損する変異株は親株と比べて、高浸透圧ストレスおよび胆汁塩ストレスに対して強い耐性を示し、一方でBusAAを欠損する変異株は感受性が高かった。胆汁塩に短時間曝露されたC. difficile細胞では細胞内c-di-AMP濃度が低下していたことから、膜特性の変化が細胞内c-di-AMP濃度の変化を誘導したことが示唆された。マウス腸管定着モデルにおいて野生型は定着できた一方で、c-di-AMPを分解できないC. difficile株は持続的な定着ができなかった。このように、C. difficileにおけるc-di-AMPの産生と分解は、浸透圧調節物質の取り込みを調節して浸透圧耐性と胆汁塩耐性をもたらすなど多面的作用を有し、さらにその分解は宿主定着に重要である。

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2022年9月6日号

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