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キナーゼPLK1は受容体RETの転写活性化を通じてKras/Tp53変異肺腺がんの発生を促進する
The kinase PLK1 promotes the development of Kras/Tp53-mutant lung adenocarcinoma through transcriptional activation of the receptor RET
SCIENCE SIGNALING
4 Oct 2022 Vol 15, Issue 754
DOI: 10.1126/scisignal.abj4
Yifan Kong1,2, Derek B. Allison2,3, Qiongsi Zhang1,2, Daheng He2, Yuntong Li2, Fengyi Mao1,2, Chaohao Li1,2, Zhiguo Li1,2, Yanquan Zhang1,2, Jianlin Wang1,2, Chi Wang2, Christine F. Brainson1,2, Xiaoqi Liu1,2,*
- 1 Department of Toxicology and Cancer Biology, University of Kentucky, Lexington, KY, 40536, USA.
- 2 Markey Cancer Center, University of Kentucky, Lexington, KY 40536, USA. 3Department of Pathology and Laboratory Medicine, University of Kentucky, Lexington, KY 40536, USA.
* Corresponding author. Email: xiaoqi.liu@uky.edu
有糸分裂の枠を超えたPLK1の動き
キナーゼPLK1は細胞分裂のプロセスを媒介し、それによって多数のがんの増殖が誘導される。Kongらは、PLK1の存在量が増加している一般的な病型のヒト肺腺がんの遺伝子改変マウスを用い、PLK1が腫瘍増殖を促進する独立した機構を明らかにした。KRAS変異マウスの培養下および体内の肺腺がん細胞において、PLK1キナーゼ活性により、受容体キナーゼRETをコードする遺伝子の発現が亢進した。RETはKRASと共にマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路を活性化し、それによって腫瘍増殖を促進していた。PLK1の存在量が多いマウス肺がんモデルにおいて、MAPK経路阻害薬であるトラメチニブとRET阻害薬であるプラルセチニブ(いずれも一部の肺がんに対して臨床的に承認されている)の併用投与は、腫瘍退縮および生存期間の延長を誘導した。これらの知見は、一部の肺腺がんに対する治療戦略候補を示唆している。
要約
様々ながん種、特に肺腺がん(LUAD)において、Polo様キナーゼ1(PLK1)の高い存在量が認められる。本稿でわれわれは、PLK1が、細胞の有糸分裂を媒介する際のその役割とは別の機構を通じて、LUADの進行を加速することを見いだした。ヒト腫瘍データベースの解析から、LUADにおけるPLK1の高い存在量はKRASおよびp53の変異、腫瘍の病期、および患者における生存率の短縮と相関していることを明らかにした。KRASG12D誘発性のp53欠損LUADのマウスモデルにおいて、PLK1の過剰発現は腫瘍量を増加させ、腫瘍細胞の分化を抑制し、動物の生存期間を短縮させた。培養細胞およびマウス体内におけるPLK1の過剰発現は、転写因子TTF-1をリン酸化することで、受容体チロシンキナーゼRETをコードする遺伝子の発現を間接的に亢進させた。これらの腫瘍におけるRETおよび変異型KRASによるシグナル伝達は統合してマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路を活性化させた。MAPK経路のキナーゼMEKの薬理学的阻害と、RETまたはPLK1のいずれかの阻害を同時に行ったとき、腫瘍増殖は顕著に抑制された。これらの知見から、PLK1がMAPKシグナル伝達を増幅できることが示され、さらに、PLK1存在量が多い肺がんにおいて進行を食い止めるための標的候補が明らかとなった。