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- ヒト脳組織モデルにおいて反復性の損傷はHSV-1を再活性化することによってアルツハイマー病に関連する表現型を誘導する
ヒト脳組織モデルにおいて反復性の損傷はHSV-1を再活性化することによってアルツハイマー病に関連する表現型を誘導する
Repetitive injury induces phenotypes associated with Alzheimer’s disease by reactivating HSV-1 in a human brain tissue model
SCIENCE SIGNALING
7 Jan 2025 Vol 18, Issue 868
[DOI: 10.1126/scisignal.ado6430]
Dana M. Cairns1, Brooke M. Smiley1, Jordan A. Smiley1, Yasaman Khorsandian1, Marilyn Kelly1, Ruth F. Itzhaki2, 3, *, David L. Kaplan1, *
- 1 Department of Biomedical Engineering, Tufts University, Medford, MA 02155, USA.
- 2 Institute of Population Ageing, University of Oxford, Oxford OX2 6PR, UK.
- 3 Division of Neuroscience, School of Biological Sciences, University of Manchester, Manchester M13 9PL, UK.
- * Corresponding author. Email: David.Kaplan@tufts.edu (D.L.K.); Ruth.Itzhaki@ageing.ox.ac.uk (R.F.I.)
Editor's summary
単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の感染は、よくある生涯にわたる感染であり、多くの場合潜伏状態となり、周期的に再活性化する。HSV-1感染は、一部の人々における神経変性疾患および認知症のリスク因子であり、脳振盪などの頭部損傷の反復も同様にリスク因子である。Cairnsらは、3次元ヒト脳組織モデルにおいて、脳振盪を再現した機械的損傷の反復によって潜伏HSV-1が再活性化されることを見出した。この機構により、βアミロイドの凝集や神経変性疾患に関連するその他の病的特徴が、炎症性サイトカインのIL-1βに依存する形で引き起こされた。これらの結果は、認知症関連疾患に関与する可能性のある機構において、2つのリスク因子を直接結び付けるものである。—Leslie K. Ferrarelli
要約
APOE4保有者の脳における単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の感染は、アルツハイマー病(AD)のリスクを高める。われわれは以前に、APOE4ヘテロ接合ヒト脳組織の3次元in vitroモデルにおいて、潜伏HSV-1が、他の病原体の曝露によって引き起こされた神経炎症に反応して再活性化されることを見出した。外傷性脳損傷も神経炎症を引き起こすことから、脳損傷が同様に潜伏HSV-1を再活性化するのではないかと推測した。今回われわれは、潜伏HSV-1感染の非存在下または存在下で、ヒト脳モデルに対する1回または複数回の制御された打撃の影響を検討した。軽度の制御された打撃を反復した後に、潜伏感染組織では、HSV-1の再活性化、βアミロイドおよびリン酸化タウ(シナプス機能障害と神経変性を促進する)の生成と蓄積、神経膠症の活性化(破壊的な神経炎症に関連する)が認められた。これらの影響は集合的にAD、認知症および慢性外傷性脳症(CTE)に関連し、追加の損傷により増加したが、偽感染した組織では認められなかった。サイトカインのIL-1βを阻害すると、潜伏感染した単層培養において、引っ掻き傷の後のアミロイドおよび神経膠症の誘導が妨げられた。したがってわれわれは、頭部への直接的な打撃または頭部を揺さぶる動作などによる脳への機械的損傷が反復されると、結果として生じる脳内のHSV-1の再活性化が、一部の人々においてADや関連疾患の発症をもたらす可能性があることを提唱する。