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受容体グアニリルシクラーゼNpr2の侵害受容器特異的シグナル伝達が急性および持続性の疼痛に関与する

Nociceptor-specific signaling of the receptor guanylyl cyclase Npr2 contributes to acute and persistent pain

Research Article

SCIENCE SIGNALING
3 Jun 2025 Vol 18, Issue 889
DOI: 10.1126/scisignal.adq4238

Hannah Gerninghaus1, †, Jörg Isensee2, †, Lea Kennel1, Fangyuan Zhou1, Anja Kaiser1, Tilman Gross1, Cathrin Flauaus1, Patrick Engel1, Christoph Jacobs1, Jonas Petersen1, ‡, Wiebke Kallenborn-Gerhardt1, Ruirui Lu1, Katharina Metzner1, Julia Adler3, Peter Ruth3, Robert Lukowski3, Tim Hucho2, Hannes Schmidt4, Achim Schmidtko1, *

  1. 1 Institute of Pharmacology and Clinical Pharmacy, Goethe University Frankfurt, 60438 Frankfurt am Main, Germany.
  2. 2 Department of Anesthesiology and Intensive Care Medicine, Translational Pain Research, Faculty of Medicine and University Hospital of Cologne, University of Cologne, 50931 Cologne, Germany.
  3. 3 Department of Pharmacology, Toxicology and Clinical Pharmacy, Institute of Pharmacy, University of Tübingen, 72076 Tübingen, Germany.
  4. 4 Interfaculty Institute of Biochemistry, University of Tübingen, 72076 Tübingen, Germany.
  5. * Corresponding author. Email: schmidtko@em.uni-frankfurt.de
  6. † These authors contributed equally to this work.
  7. ‡ Present address: Institute of Immunology, University of Münster, 48149 Münster, Germany.

Editor's summary

侵害受容器と呼ばれる感覚ニューロンクラスによる疼痛の知覚には、ヌクレオチド環状GMP(cGMP)が必要である。Gerninghausらは、侵害受容器において受容体グアニリルシクラーゼNpr2によって産生されるcGMPが関連する痛覚経路を特定した。感覚ニューロン特異的Npr2欠損マウスでは、侵襲性の熱の感知への応答が損なわれ、慢性疼痛に関与する現象である疼痛感作に抵抗性を示した。C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)によってNpr2を活性化させると、CRP4と呼ばれるタンパク質がリン酸化され、CRP4欠損マウスでは疼痛感作が亢進した。このように、この疼痛シグナル伝達経路は急性および慢性の疼痛を軽減するための標的となる可能性がある。—Wei Wong

要約

ナトリウム利尿ペプチド受容体2(Npr2、別名グアニル酸シクラーゼB)は、侵害受容器にきわめて多く含まれる膜貫通グアニリルシクラーゼである。本稿でわれわれは、疼痛プロセシングにおいてNpr2による環状GMP(cGMP)の産生が担う役割を調べた。侵害受容感覚ニューロン特異的にNpr2を欠損させた成体マウスでは、非選択性カチオンチャネルTRPV1およびTRPA1を活性化しうる侵襲性の熱の感知に欠損がみられた。並行して、Npr2欠損マウスでは、TRPV1に媒介される侵害防御行動と感覚ニューロンへのCa2+流入が減少した。さらに、Npr2欠損マウスでは、TRPA1およびTRPV1活性化因子の後肢注入後、または持続的な炎症性疼痛モデルである完全フロイントアジュバントの後肢注入後に過敏症がかなり軽減された。これらの結果は、Npr2が慢性疼痛につながる可能性のある疼痛感作に関与していることを示している。パッチクランプ記録によって、内在性Npr2リガンドであるC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)がNpr2を介して侵害受容感覚ニューロンの興奮性を高めることが明らかにされた。CNP/Npr2シグナル伝達は、cGMP依存性タンパク質キナーゼIの基質であるシステインリッチLIM-onlyタンパク質4(CRP4)のリン酸化を引き起こした。CRP4欠損マウスを用いた行動学的解析および電気生理学的解析では、CRP4がCNP/Npr2に媒介される疼痛感作を制限することが明らかになった。これらの知見は、急性侵害受容性および慢性疼痛において感覚ニューロンにおけるCNP/Npr2シグナル伝達が担う役割を明らかにし、CRP4が疼痛感作を減弱させる下流標的であることを示唆するものである。

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2025年6月3日号

Research Article

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