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- E3リガーゼTRIM21は、TAp63αの発現を低下させIL20RBの抑制解除により膵管腺がんの進展を促進している
E3リガーゼTRIM21は、TAp63αの発現を低下させIL20RBの抑制解除により膵管腺がんの進展を促進している
The E3 ligase TRIM21 promotes progression of pancreatic ductal adenocarcinoma by down-regulating TAp63α and derepressing IL20RB
SCIENCE SIGNALING
3 Jun 2025 Vol 18, Issue 889
DOI: 10.1126/scisignal.adv4579
Zejiao Li1, †, Fengwei Gao2, †, Xuesha Liu3, †, Shijie Fan1, †, Yucheng Qi1, Mingzhu He1, Xiushuang Luo1, Xiaoyun Nie1, Jia Wang1, Yajun Wang4, Zhi-Xiong Jim Xiao1, Chenghua Li1, *
- 1 Center of Growth, Metabolism, and Aging, Key Laboratory of Bio-Resource and Eco-Environment of Ministry of Education, College of Life Sciences, Sichuan University, Chengdu 610064, Sichuan, China.
- 2 Liver Transplantation Center, State Key Laboratory of Biotherapy and Cancer Center, West China Hospital, Sichuan University and Collaborative Innovation Center, Chengdu 610041, Sichuan, China.
- 3 College of Life Sciences, China West Normal University, Nanchong 637009, Sichuan, China.
- 4 Key Laboratory of Bio-Resource and Eco-Environment of Ministry of Education, College of Life Sciences, Sichuan University, Chengdu 610064, Sichuan, China.
- † These authors contributed equally to this work.
- * Corresponding author. Email: lichenghua@scu.edu.cn
Editor's summary
サイトカイン受容体IL-20Rは、p53またはKRAS変異型膵管腺がん(PDAC)において転移の進展および化学療法抵抗性を促進する。LiらはPDACにおいて、p53/KRAS変異体依存性機構により、IL-20Rサブユニットβ(IL20RB)をコードする遺伝子の発現が可能になっていることを見いだした。IL20RBの発現は、転写因子TAp63αにより抑制されていた。しかし、p53またはKRASの変異によって、E3ユビキチンリガーゼTRIM21の存在量が増加し、TRIM21がTAp63αの分解を誘導することでIL20RBの抑制を解除した。このようなTRIM21に依存した軸は、培養下およびマウス体内の進行期PDACの特徴を促進し、PDACの転移ドライバーと直接関連していた。—Leslie K. Ferrarelli
要約
膵管腺がん(PDAC)は悪性度の高い腫瘍であり、転写因子p53の変異が高頻度にみられる。TAp63αは、その他のp53変異またはp53欠損の各種がんにおいて一般に腫瘍抑制性をもつ、p53タンパク質ファミリーのメンバーである。本稿でわれわれは、TAp63αが数種のp53変異PDAC細胞株の細胞増殖、上皮間葉転換(EMT)、および遊走を阻害することを見いだした。TAp63αは、転写レベルでIL20RB(インターロイキン-20受容体のサブユニットをコードする)を抑制したが、これはおそらくそのプロモーターのメチル化の誘導によるものであった。しかし、PDACで多くみられるp53またはKRASの変異は、E3リガーゼTRIM21の存在量を増加させ、それによってユビキチン依存性のTAp63α分解を促進した。したがってTAp63αの分解は、IL20RBの発現およびIL-20受容体の形成の亢進を可能にし、その結果、PDAC細胞の増殖、EMT、遊走およびin vivoの転移播種を刺激することになる、下流に位置するJAK1-STAT3シグナル伝達の活性化が生じた。これらの知見から、PDACの進展においてTRIM21、TAp63αおよびIL-20RBが関与するシグナル伝達軸が同定された。