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- アンフィレギュリンは感覚ニューロンにおいてヒストンのラクチル化を刺激する解糖系を亢進させることによって神経障害性疼痛に関与する
アンフィレギュリンは感覚ニューロンにおいてヒストンのラクチル化を刺激する解糖系を亢進させることによって神経障害性疼痛に関与する
Amphiregulin contributes to neuropathic pain by enhancing glycolysis that stimulates histone lactylation in sensory neurons
SCIENCE SIGNALING
17 Jun 2025 Vol 18, Issue 891
DOI: 10.1126/scisignal.adr9397
Yu-Tao Deng1, †, Longfei Ma1, †, Yixiao Mei1, †, Ji-Shuai Wang2, †, Xue-Hui Bai1, Xuan-Jie Zheng1, Jin-Xuan Ren1, Da Zhong1, Bing-Lin Zhou1, Jia Dan1, Xue Li2, Yong-Jing Gao3, Lina Yu1, 4, Min Yan1, 2, 4, 5, *, Bao-Chun Jiang1, 2, 3, 4, 5, *
- 1 Department of Anesthesiology, Second Affiliated Hospital, Zhejiang University School of Medicine, Hangzhou 310009, Zhejiang, China.
- 2 Pain Management Center, Department of Anesthesiology, Second Affiliated Hospital, Zhejiang University School of Medicine, Hangzhou 310009, Zhejiang, China.
- 3 Institute of Pain Medicine and Special Environmental Medicine, Nantong University, Nantong 226019, Jiangsu, China.
- 4 Zhejiang Key Laboratory of Pain Perception and Neuromodulation, Hangzhou 311202, China.
- 5 State Key Laboratory of Transvascular Implantation Devices, Hangzhou 311202, Zhejiang, China.
- † These authors contributed equally to this work.
- * Corresponding author. Email: jiangbaochun@zju.edu.cn (B.-C.J.); zryanmin@zju.edu.cn (M.Y.)
Editor's summary
炎症と、細胞代謝および遺伝子発現の適応的変化は、いずれも神経障害性疼痛に関連する。Dengらは、これらの要因が成長因子アンフィレギュリンによって誘導される機構で繋がっていることを明らかにした。マウスにおいて、末梢神経の損傷は感覚ニューロンおよび関連グリアからのアンフィレギュリン分泌を促進した。EGFRのリガンドであるアンフィレギュリンは、ニューロンの解糖系代謝と酪酸産生を刺激し、結果的にヒストンのラクチル化を引き起こして疼痛および炎症関連遺伝子の発現を促進させた。この経路を遮断すると、マウスの機械感受性も温度感受性も低下したことから、患者の神経損傷関連疼痛を治療するための戦略となりうることが示唆された。—Leslie K. Ferrarelli
要約
末梢神経損傷後の細胞傷害性疼痛の発生には、感覚ニューロンにおける遺伝子発現および細胞代謝の変化と、炎症性サイトカインの放出が関連する。本稿でわれわれは、上皮成長因子受容体(EGFR)のリガンドであるアンフィレギュリン(AREG)によって誘導される解糖系代謝を、ヒストンのラクチル化および慢性神経障害性疼痛を促進する遺伝子発現変化と関連づけた。末梢神経損傷を受けた雌雄両方のマウスにおいて、AREGおよびその受容体であるEGFRのmRNA量およびタンパク質量が後根神経節(DRG)で増加していた。AREG-EGFRシグナル伝達は、キナーゼPKM2を活性化することによって解糖系代謝を誘導した。解糖系副産物の酪酸の増加は、DRGニューロンにおいてラクチルトランスフェラーゼp300によるヒストンリジンH3K18およびH4K12のラクチル化を促進した。これらの修飾は、疼痛の発生と持続に関与する多様な炎症促進性タンパク質および痛覚促進性タンパク質をコードする遺伝子の発現を促進させた。AREGの欠損またはノックダウン、あるいはEGFR、PKM2、またはp300の薬理学的阻害によって、マウスの神経障害性疼痛は軽減され、損傷により誘導される侵害受容性ニューロンの興奮性亢進は減弱された。代謝に駆動されるこのエピジェネティックな機構を標的にすれば、患者の神経障害性疼痛を治療できるかもしれない。