• ホーム
  • 野生型RASシグナル伝達はRAS変異型がんのきわめて重要な治療標的である

野生型RASシグナル伝達はRAS変異型がんのきわめて重要な治療標的である

Wild-type RAS signaling is an essential therapeutic target in RAS-mutated cancers

Research Article

SCIENCE SIGNALING
16 Sep 2025 Vol 18, Issue 904
DOI: 10.1126/scisignal.adx5186

Nancy E. Sealover1, Bridget A. Finniff1, Jacob M. Hughes1, Erin Sheffels1, Hyun Lee1, Joseph P. LaMorte1, 2, Vainavi Gambhir1, Zaria Beckley1, Amanda Linke1, Matthew D. Wilkerson2, Marielle E. Yohe3, 4, Robert L. Kortum1, *

  1. 1 Department of Pharmacology and Molecular Therapeutics, Uniformed Services University of the Health Sciences, Bethesda, MD 20814, USA.
  2. 2 Department of Anatomy, Physiology, and Genetics, Uniformed Services University of the Health Sciences, Bethesda, MD 20814, USA.
  3. 3 Laboratory of Cell and Developmental Signaling, Center for Cancer Research, National Cancer Institute, NIH, Frederick, MD 21701, USA.
  4. 4 Pediatric Oncology Branch, Center for Cancer Research, National Cancer Institute, NIH, Bethesda, MD 20892, USA.
  5. * Corresponding author. Email: robert.kortum@usuhs.edu

Editor's summary

変異型RASはさまざまながんの増殖を促進することから、複数の変異型選択的薬剤が臨床用として承認済み、または開発中である。Sealoverらは、変異型および野生型のRASメンバーが混在する状況では下流のMAPK経路とPI3K経路が差次的かつ相補的に関与し、腫瘍の発生を効果的に阻止するには両者への複合アプローチが必要とされることを明らかにした。たとえば、KRAS変異型細胞では、変異型KRASよりも野生型HRASおよびNRASによってより活性化されるPI3Kを阻害することによって、KRAS変異体特異的阻害薬との相乗効果による細胞傷害性が認められた。これらの知見は、変異型RASを有するがん細胞における野生型RASファミリーメンバーのきわめて重要な関与を明らかにするものであり、変異型と野生型の両方を同時に標的とする治療アプローチの必要性を示している。—Leslie K. Ferrarelli

要約

変異型RASタンパク質は、下流エフェクター経路(RAF-MEK-ERKおよびPI3K-AKT)を活性化することによって、がん化と増悪を促進する。RASファミリーメンバーはこれらの経路に差次的に関与するため、RAS変異型がんを効果的に治療するには両経路を複合的に阻害する必要がある。本稿でわれわれは、これは野生型RASファミリーメンバーが関与するシグナル伝達に起因するものであり、変異型RASファミリーメンバーによる関与の薄いエフェクター経路を野生型RASファミリーメンバーが活性化させていることを明らかにした。変異型HRASを発現する細胞では野生型KRASおよびNRASがRAF-MEK-ERKシグナル伝達を促進し、変異型KRASを発現する細胞では野生型HRASおよびNRASがPI3K-AKTシグナル伝達を促進した。変異型RASによる関与の薄いRASエフェクター経路を標的とする阻害薬に、変異型RASを標的とする阻害薬を組み合わせると、野生型RASの発現に依存する形で相乗的な細胞傷害性が認められた。HRAS変異型細胞では、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬ティピファニブが変異型HRAS-PI3Kシグナル伝達を遮断し、MEK阻害薬と相乗した。一方、KRASG12C変異型細胞では、KRASG12C阻害薬が変異型KRAS-MEKシグナル伝達を遮断し、PI3K阻害薬と相乗した。すべてのRASタンパク質を欠損させたMEFと、非変異型RASファミリーメンバーを欠損させたがん細胞株では、相乗効果は消失した。これらのデータは、変異型RASシグナル伝達を補助するうえで野生型RASファミリーメンバーが担うきわめて重要な役割と、RAS変異型がんの治療の共標的としての野生型RASファミリーメンバーの重要性を浮き彫りにしている。

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2025年9月16日号

Research Article

インターロイキン15と18はmTORC1の非典型的活性化を通じてナチュラルキラー細胞の抗腫瘍機能を相乗的に刺激する

野生型RASシグナル伝達はRAS変異型がんのきわめて重要な治療標的である

最新のResearch Article記事

2026年04月14日号

高グルコースはCreb3のO-GlcNAc化と乳酸産生の増加を介して認知機能を低下させる

2026年04月14日号

脳由来神経栄養因子がニューロンに内在する複数のプログラムを協調させてヒト運動ニューロンの軸索再生を促進する

2026年04月07日号

Wnt依存性のFrizzledクラスター化はDishevelledのリン酸化に必要であるがβ-カテニンの安定化には十分でない

2026年03月31日号

抗ムスカリン薬はムスカリン性アセチルコリン1型受容体においてβ-アレスチンバイアスアゴニズムを発揮しDRG神経突起形成を促進する

2026年03月31日号

タンパク質RAB5IFはGαi1/3のSUMO化を刺激することによってBDNFシグナル伝達を促進し、マウスのうつ病様行動を軽減する