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PARP1を介したTEAD4のポリ(ADPリボシル)化がYAP1-TEAD4複合体を安定化し、乳がん細胞の増殖と免疫回避を促進する

PARP1-mediated PARylation of TEAD4 stabilizes the YAP1-TEAD4 complex and promotes growth and immune evasion in breast cancer cells

Research Article

SCIENCE SIGNALING
21 Oct 2025 Vol 18, Issue 909
DOI: 10.1126/scisignal.adx2532

Yibo Guo1, †, Gaoqing Song1, †, Hailin Zou1, †, Liangxin Lu1, Xuyin Dai2, Chuannan Sun1, Haoming Chen1, Tongyu Tong3, Mengjun Huang3, Mengyuan Zhu4, Liang Deng5, Yulong He6, *, Changhua Zhang6, *, Juan Luo1, *, Peng Li1, 6, *

  1. 1 Scientific Research Center, Seventh Affiliated Hospital of Sun Yat-sen University, No. 628 Zhenyuan Road, Shenzhen 518107, Guangdong, China.
  2. 2 Yorba Linda High School, 19900 Bastanchury Rd, Yorba Linda, CA 92886, USA.
  3. 3 Department of Urology, Pelvic Floor Disorders Center, Seventh Affiliated Hospital, Sun Yat-sen University, Shenzhen 518107, Guangdong, China.
  4. 4 Department of Oncology, Seventh Affiliated Hospital of Sun Yat-Sen University, No. 628 Zhenyuan Road, Shenzhen 518107, Guangdong, China.
  5. 5 Department of General Surgery, Seventh Affiliated Hospital of Sun Yat-sen University, No. 628 Zhenyuan Road, Shenzhen 518107, Guangdong, China.
  6. 6 Guangdong Provincial Key Laboratory of Digestive Cancer Research, Seventh Affiliated Hospital of Sun Yat-sen University, No. 628 Zhenyuan Road, Shenzhen 518107, Guangdong, China.
  7. * Corresponding author. Email: lipeng56@mail.sysu.edu.cn (P.L.); luoj239@mail.sysu.edu.cn (J.L.); zhchangh@mail.sysu.edu.cn (C.Z.); heyulong@mail.sysu.edu.cn (Y.H.)
  8. † These authors contributed equally to this work.
  9. * Corresponding author. Email: feng.cong@novartis.com

Editor's summary

転写コレギュレーターであるYAP1は種々のがん、特にトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の進展を促進する。これを直接阻害する薬物は確認されていないが、Guoらは、臨床的に承認されているポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬がこれを間接的に標的にする可能性を見いだした。TNBC培養細胞においてPARP1はYAP1と相互作用し、YAP1のパートナー分子であるTEAD4をポリ(ADPリボシル)化した。これによりYAP1-TEAD4複合体を安定化し、この複合体による腫瘍細胞の幹細胞性、運動性および免疫逃避と関連する遺伝子発現の活性化を促進した。TNBCマウスモデルにおいてPARPの阻害はYAP1分解を促進し、免疫化学療法の有効性を増強したことから、このコンビナトリアルアプローチをTNBC患者の治療に使用できる可能性が示唆された。—Leslie K. Ferrarelli

要約

転写コアクチベーターYAP1は、臓器サイズの調節や組織恒常性を含め数多くの生物学的プロセスを調節している。YAP1の過剰活性化により腫瘍の発生と進展が促進されるものの、YAP1自体を標的とした薬剤の開発にはまだ至っていない。本稿でわれわれは、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼであるPARP1が、乳がん細胞の幹細胞性、転移挙動および抗腫瘍免疫の回避を媒介するYAP1-TEAD4複合体の転写活性を促進することを見いだした。このPARP1を介した機構は、DNA損傷応答におけるその役割とは無関係であった。具体的には、PARP1は、保存されているArg-Lys配列でTEAD4をポリADPリボシル化することでYAP1-TEAD4複合体と直接相互作用し、その形成を促進していた。このようなPARP1により増強されるYAP1-TEAD4の結合は、YAP1とE3ユビキチンリガーゼCRL4DCAF12との相互作用を減弱し、それによりYAP1のユビキチン化と分解を阻止していた。さらに乳がん組織および細胞株におけるPARP1タンパク質の存在量は、YAP1および免疫チェックポイントタンパク質PD-L1の存在量と相関していた。トリプルネガティブ乳がんのマウスモデルにおいてPARP1を薬理学的に阻害すると、PD-L1遮断抗体の効果が増強され、細胞傷害性および腫瘍抑制性をもつT細胞の浸潤の増加、ならびに腫瘍増殖の減少が認められた。これらの知見は、乳がん細胞においてYAP1-TEAD4転写活性および免疫逃避が促進される機構を明らかにするとともに、この機構が、臨床的に承認されている治療薬の標的となりうることを示唆している。

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